「人の心を傷つける言葉を使っちゃいけないな」 と感じましたよ、その時に。

糸井 大久保さんは、いまでも
藤田さんのことをうれしそうに言いますね。
藤田 あいつから、やめる時に、
電話がかかってきたんですよ。
「いろいろお世話になりましたけど、
 やめます。決まりました。
 ところで‥‥ぼくにヤセろと言わなかった
 監督は、藤田さんだけです」
それを聞いて、
「何を言っているんだろう」
とはじめは思ったんです。でも感謝をされていた。
本人はヤセたくてしようがないんですけど、
みんなから、ヤセろヤセろと言われるから、
無性に腹が立っていたらしいんですね。
ぼくは大久保には、いつも、
「おまえ、その体を保つのには
 うんと走らなきゃいかんなぁ」
と言っていました。
確かに、一言もヤセろとは言わなかった。
大久保にとっては、
「ヤセろ」といわれなかったのは
うれしかったんですね。
ぼくは、走ればやせると思ったんですけど。
糸井 そうか、内容は同じなんだ(笑)
藤田 ええ。
でも、大久保が、やめるあいさつのときに
そう言ったものですから、ますます、
「人の心を傷つける言葉を使っちゃいけないな」
と感じましたよ、その時に。
だから、同じことを言うのでも、違う方向から、
傷つけない言いかたを、しなきゃいけない。
それが、だいじなことだとわかりましたよね。
糸井 ああ‥‥。
やっぱり、そこだけはいわれたくない、
というのが、みんなあるんですよね。
藤田 あったんですよね。