コンピューターを用いてうつ状態の青年に実施した認知行動療法は通常治療と同等の効果を示した。
うつ病を有する青年のうち治療を受けている人は20%に満たず、その主な理由は資格を有する精神保健専門家の不足である。コンピューターを利用した介入はこの隙間を埋められるのか?その答えを見出すべく、本論文の著者Merryらはニュージーランドにおいて無作為化試験を実施し、臨床的に著しいうつ状態のために援助を求めた青年187例(女性60%;平均年齢15.5歳)を通常治療群(訓練を受けたカウンセラーまたは一般医が対面して治療を実施)もしくはコンピュータープログラムを利用した認知行動療法(CBT)介入(SPARX)群に無作為に割り付けた。
「臨床的に著しいうつ状態」はPatient Health Questionnaire-9のスコアが10~19点、あるいは自己報告に基づき臨床医が介入の必要性を確認したうつ状態と定められた。コンピューター化されたCBT介入では中核的技能(希望を見出す、無用な考えを認識するなど)をカバーするように設計された双方向的ファンタジー系ゲームを使用し、被験者は4~6週間かけて7種類のモジュール(レベル)を体験した。被験者はアバターを選択し、悲観的・否定的な自動思考(GNAT)に支配される世界の中で課題を解決し、バランスの回復に努めた。各レベルの開始時と終了時に、参加者は「案内役」のキャラクターと対話し、うつ病についての教育、気分の測定を受け、実生活における課題の指示・モニタリングを受けた。参加者の60%が7種類のモジュールすべてを終了した。
Children's Depression Rating Scale-Revised(主要評価項目)の生スコアの低下は2群間でほぼ同等で、治療反応率は両群とも約60%であった。寛解率はコンピューター治療群のほうが有意に高かった(44% 対 26%[通常治療群])。他のすべての副次的評価項目の解析において、コンピューターによる介入の非劣性が確認された。介入終了後3ヵ月目の追跡調査でも改善効果は維持されていた。
コメント
本研究の対象は治療を求めた青年のみで、重度のうつ状態あるいは自傷のリスクが高いと判断された青年は除外されたため、これらの知見をうつ状態にある青年すべてには適用できないかもしれない。しかしながら、今回の結果は期待を抱かせるものである。精神保健専門家の不足が近い将来解消される見通しはなく、本研究が試みた介入はこの不足問題を解決する代替手段としての有望性を示している。著者らはコンピューターを用いたアプローチに期待される他の利点として、従来の治療には消極的な青年でも関心を呼び起こす可能性があると述べている。