マインドフルネスを鍛えるために、出勤前や1日の途中に数十分間の瞑想をするのは効果的だが、その時間すらとれない人も多いだろう。マインドフルネスの戦略的な取り組みを支援する専門家マリア・ゴンザレスが、いつどこでも実践できる訓練法を紹介する。ポイントは、「いまこの時」を数分、さらには数秒という短い単位でとらえることだ。
いまや流行語にもなっている「マインドフルネス」とは、実際のところ何なのか。簡単にいえば、どんな状況下でも、一瞬一瞬において、「いまこの時をとらえる」力であり、「気づく」力である。
研究によれば、マインドフルネスによって、感情的な状態からより理性的になるよう脳が再調整される。瞑想の実践者の脳を観察したところ、合理的な意思決定に関わる部位である後部島皮質の活性化が見られ、これが感情よりも事実に基づく意思決定につながることも示された。この発見は朗報だ。なぜなら他の研究によれば、人は論理的思考をする際に、実際には感情に大きくとらわれているからである。理性と感情は切り離せない。のみならず、私たちが人や物事、アイデアに対して抱く正と負の感情は、意識的な思考よりずっと速く――1000分の1秒ほどで――表面化する。私たちは脅威となる情報を遠ざけ、好ましい情報を大事にする。そして敵対者に対してだけでなく、データそのものに対しても「闘争・逃避」反応を示す。
マインドフルネスを訓練し、そのメリットを得るにはいくつかの方法がある。1日を始める前にある程度の時間をとり、じっと座って瞑想する、という訓練法ならあなたも聞いたことがあるだろう。これは間違いなく有益である。しかし私がお勧めしたいのは、マインドフルネスを1日中、あらゆる状況で実践できる方法だ。つまり、常にマインドフルな状態で生活を送ることで、やがてマインドフルネスの取り組みと他の活動――プレゼンテーション、契約交渉、車の運転、エクササイズ、ゴルフなど――との境界がなくなるというわけだ。
1つ目に、私が「マイクロ・メディテーション」と呼ぶテクニックを試してみてほしい。これは1回1~3分の瞑想を、1日に数回やるという方法だ。1日を通して特定のタイミングで、自分の呼吸を意識するのだ。たとえばストレスを感じ始めた時や、やることが多すぎて時間が足りないと感じた時、あるいは気が散ってしょうがない時や、興奮を抑えきれない時でもよい。
まず、自分がどう呼吸しているかに注意を向ける。それは浅い呼吸なのか、深いのか。息をひそめているのか、その時にお腹を引っ込めているのか、あるいは背中を丸めているのか。
次に、お腹に息を届かせるように呼吸を始める。ただし力んではいけない。腹式呼吸を不自然に感じるなら、胸の下あたりまで吸い込むのでも構わない。もし意識がさまよってしまったら、徐々に呼吸へと意識を戻せばよい――集中力を一瞬失った自分を責めることはない。