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最初にいっておくと、東京の美術館てすごく面白いんです。ルーブルなりオルセーなりエルミタージュなり、世界中の有名美術館のコレクションが次々にやってくるし、現代アートだって充実していると思います。でも、こういった期間限定の〈企画展〉に夢中になれるのって、たぶん私が「首都圏に住んでいる日本人」だからなんですよね。自分の住んでいるところに目新しい作品が次々にやってきたら、楽しいに決まってます。
でも逆の立場、つまり「首都圏に住んでいる日本人」ではなくて、「観光目的で日本を訪れる外国人」になってみたら、この状況ってちょっと「あれ?」ってかんじなんじゃないかと思いました。たとえば、私が旅行でパリやロンドンやニューヨークの美術館に行くとき、何が見たいと思うでしょうか。私の場合、パリだったらギュスターブ・モローとかフェルナン・レジェが見たいし、ロンドンだったらターナーやウィリアム・モリスが見たいし、ニューヨークだったらウォーホルやジャクソン・ポロックが見たいと思います。そして欧米の美術館の場合、観光客のその欲求にきちんと答えられるよう、美術館ごとのコレクションに特色があるんですよね。
一方、東京の美術館はどうかというと、〈企画展〉は確かに面白いんですけど、「日本のこのアーティストの作品が見たい」となったときに、「あ、それならここで見れるよ」と案内できる美術館が、決定的に欠けている気がします
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