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でもね、ほんとは業界よりもなによりも、美術大学という場所がすでにおかしいんですよね。もし僕がロックバンドをやりたいとか、DJになりたいとかだったら、まずギターやターンテーブルを買うでしょう。そしてひたすら練習するでしょう。いきなり音楽大学を受験したりはしないですよね。もし僕が小説家や詩人になりたかったら、まず紙とペンを持つか、ワープロを立ち上げて書き出すでしょう。大学の文学部国文科を受験したりしないですよね。
でも、美術だけはなんだかちがう(ということになっている)。絵を描きたかったら、画材を買って描き出せばいいだけのはずなのに、美大をお受験しないとアーティストになれないような風潮になっていて。カネもないし、かっこよくもないし、もてないし、頭もわるいし、なんにも取り柄がないけれど、でも絵を描いてるときだけは自己嫌悪に陥らないですむ・・そういう人間を救う場として、いまの美大はまったく機能していません。アートとはそもそも、「持たざるもの」の最後の命綱であるべきなのに。
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