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ベンジャミン・M.フリードマン著『経済成長とモラル』東洋経済新報社です。前回の私の回答でも触れましたが、この書は、経済成長と人々が感じる豊かさの関係について、経済学の立場から書かれた名著といえると思います。
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なるほど。別の本で、江戸時代などは生まれてから死ぬまで
変わらない景色の範囲で生きていたのだと書いていた。
そのような安定した環境では、子供の頃に学んだ体験が後々まで生きることになる。
後々まで正しいのである。
現在は景色も、人間評価の基準も、幸福の基準も、どんどん変化しているように見える。
医学で扱うレベルの人間は多分あまり変わっていない。
変わっているのは環境だろう。
だから、子供の頃に学んだ環境は、後々役に立たないかもしれないが、
子供の頃に学んだ人間の本質は、後々役に立つかもしれないのである
しかしそのように一段次元を上げて認識することはなかなか難しくて
認知療法で取り組むメタ認知課題ではあるが
誰でも簡単に学べることでもない
そうなると、粗雑な簡単バージョンが登場して
話が混乱してしまう
一方で江戸時代は、身分制度なども一定不変、
農耕に際しては、横並びの原則を押し付けられたものだろう
反抗すれば村八分
それよりは変化したほうがいいのかもしれないが
変化にはまたきつい代償が伴うということになる
江戸時代が終わって西洋文明を吸収する明治時代
よく分からないが大正ロマンの時代
そして戦争、敗戦、高度経済成長、バブル、その後の停滞、と続く
昭和から平成
この景色の変わり様は何ということだろうと思う
もう一つは人間の接する情報が格段に広くなったことで
世界中で言えば必ずどこかで悲惨な新記録の一つも発生していそうである
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昔よりは豊かな社会になって少しは幸せになっているのに
どうして自殺者が多いのだろうということはよく話題になる
一年で3万人が10年以上続いている
『お父さん、睡眠不足はうつ病の始まりかもしれないよ』と娘にささやいてもらう
死んで清算するしかないという脳回路は案外深いレベルに埋め込まれているらしい
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その昔、三井信託は三井家の財産管理のために創設された。
昭和10年くらいの記録だとその日一日で三井信託本店を訪れた人は5人
伯爵家のお使いとか、宮家の侍従とかが来ていたと記録にあるらしい
そしてその人達のお金を満州鉄道などに投資していた
そんなのんびりした商売
ところが終戦で満鉄の債権は紙くずになり
信託は実質倒産、しかし政治的配慮で信託銀行と名前を変えて再スタート
その時、GHQのもとで新民法になり、長子相続が廃止され、
兄弟平等相続になったので、
三井信託銀行では兄弟間の血みどろの遺産相続抗争劇にお付き合いすることになったものだそうだ
それで普通の会社並みに忙しくなった
新民法が家族の絆を壊したのだと
その人は話していたが
どこまで正確な話かはよく分からない
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この話なども、長子相続だと次男は嫌な気分だろうと思うか、
いや、長子こそ嫌な役回りだと思うか、
平等相続が家を壊したのだと思うか、
いや、平等相続は一歩前進だと思うか、
そこにまた女性の相続権も絡み、妻の権利も関係し、
現実の人間の関係や幸せを
法律がどんなに変えたかを示す
いい例だと言っていた
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家への一体化を剥奪されて学校と会社への一体化が促進されたのだろう
しかしいま、アルツハイマーにならないで老後を過ごす方法を考えると、
遺伝子を共有している親戚たちがどのような生活をしていてどうなったかを
よく観察することが第一である
遺伝子が違う他人の長生き話よりも
遺伝子を共有する人間の実際の話が
自分の今後には格段に役に立つはずだ
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民法の我妻先生が新民法草案の時期に
東大の学生に長子相続を廃止すれば家族はどうなるだろうかと
話したりしていたらしい