第17章 非定型抗精神病薬
ここがポイント・非定型抗精神病薬は気分安定薬ではない。・非定型抗精神病薬はすべて抗躁病薬として有効である。・抗精神病薬は上乗せで使って長期予防効果がある。しかし双極性障害に対する単剤治療では長期予防効果はほとんどない(すなわち、非定型抗精神病薬は気分安定薬ではない)。・非定型抗精神病薬は(ゾニサミドとアリピプラゾールは除く)は伝統的抗精神病薬よりも体重増加リスクが高い。・副作用の違いを挙げると、クロザピンでてんかん発作、無顆粒球症。リスペリドンでプロラクチン上昇。クロザピンとオランザピンでコレステロールと脂質の上昇、糖尿病。ジプラシドンで心電図QT延長。・気分障害では、非定型抗精神病薬は一般に、シゾフレニーの際の半分の量でよい。
この本の第一版が出てから、NIMHがスポンサーしたCATIE研究が出版された(抗精神病薬の臨床効果についての統計:Clinical Antipsychotic Trials of Intervention Effectiveness)。単極性障害や双極性障害に対してのSTAR-DやSTEP-BDと同様に、CATIEはシゾフレニー治療について重要なデータを与えている。この本では抗精神病薬の副作用についての情報を参考にする。
17-1 作用メカニズム
伝統的抗精神病薬はD2ブロックが90%以上であることが必要なのだが、非定型抗精神病薬の場合は、D2ブロックは80%以下でも抗精神病作用を発揮する(40-60%が多い)。さらに、すべての非定型抗精神病薬はセロトニン-2(5HT-2)レセプターのほとんどすべて(90%以上)をブロックする。第三に、非定型抗精神病薬はドパミンレセプターをより選択的にブロックし、その場所は黒質線条体領域(錐体外路副作用を呈する)よりも辺縁系のドパミン系(気分や思考を補助する)である。
17-2 伝統的および非定型抗精神病薬の分類
伝統的抗精神病薬の一般的な分類は、D2ブロックの能力に応じて高、中、低とするものである(表17.1)。同じように非定型抗精神病薬を、D2プロックと5HT-2ブロックの能力に応じて分類すれば有用だと思う。 ここでクロザピンとクエチアピンを低と分類したのは、大量に投与しても、5HT-2について90%以上のブロックはないし(40-80%よりも上の程度)、D2ドパミンレセプターブロックに関しては60%に達しないからである。さらに、それぞれに対応する伝統的抗精神病薬と同じく、非定型抗精神病薬はいくつもの他のレセプターシステムをブロックする。抗コリン、抗ヒスタミン、抗アドレナリン作用などがある。 オランザピンは中と分類したが、どの量でも5HT-2の90%以上をブロックし、量に比例してD2ブロックをし、20㎎/日使用で80%以上のブロックに達する。そして抗コリン、抗ヒスタミン、抗アドレナリン作用を呈する。 リスペリドン、ジプラシドン、アリピプラゾールは高と分類したが、セロトニンレセプターの90%以上をブロックし、量に比例してD2レセプターをブロックし、大量使用では80-90%を超える。伝統的抗精神病薬と同様に、非定型抗精神病薬のそれぞれの力価に応じて副作用を呈する。 低力価非定型抗精神病薬はパーキンソン様の錐体外路症状(EPSs)が少ない。抗コリン作用は強く、体重増加も強い。 高力価非定型抗精神病薬ではパーキンソン様副作用が多く、体重増加は少ない。 中力価非定型抗精神病薬ではどの項目も中間である。 しかし非定型抗精神病薬では、セロトニンブロックの付加的影響が原因となり、体重増加しやすくなるなど、他に幾らかの違いが生じる。体重増加についてはセロトニンとヒスタミンが複雑に影響するので、オランザピンではクエチアピンよりも体重増加しやすい。伝統的抗精神病薬と同様に、遅発性ジスキネジア(TD)とアカシジアが発生するが、力価ごとに大きな違いはないようである。
表17.1 伝統的抗精神病薬と非定型抗精神病薬の力価による分類
伝統的抗精神病薬・低力価クロルプロマジン(Thorazine、コントミン、ウィンタミン)チオリダジン(メレリル)D2能力は弱い錐体外路症状は少ない多種類レセプターをブロック
伝統的抗精神病薬・中力価ペルフェナジン(Trilaphon、ピーゼットシー)トリフルオペラジン(Stelazine)すべての面で中間
伝統的抗精神病薬・高力価ハロペリドール(Haldol、セレネース)フルフェナジン(Prolixin、フルメジン)D2能力高い錐体外路症状出やすい他のレセプターブロックは少ない
非定型抗精神病薬・低力価クロザピン(クロザリル)クエチアピン(セロクエル)D2能力は弱い5HT-2能力は弱い錐体外路症状は少ない多種類レセプターをブロック体重増加多い
非定型抗精神病薬・中力価オランザピン(ジプレキサ)体重増以外は中間性質
非定型抗精神病薬・高力価リスペリドン(リスパダール)ジプラシドン(Geodon)アリピプラゾール(エビリファイ)量比例D2能力錐体外路症状多い他のレセプターブロックは少ない体重増加少ないアカシジアとTD(遅発性ジスキネジア)はどの分類でも大差なしオランザピンはクエチアピンよりも体重増加しやすい。それはオランザピンがセロトニンブロック能力が高いことと関係しているだろう。(ヒスタミンブロックは両者ともあり)
17-3 気分障害での伝統的抗精神病薬の使用
伝統的抗精神病薬は気分障害、中でも主に双極性障害の治療にこれまで使われ、現在も広く使われている。しかし、2つの二重盲検試験で示されたところによると、リチウムに上乗せされた伝統的抗精神病薬は、リチウム単独と比較して、双極性障害の躁病の予防に無効である。実際、抗精神病薬の使用は長期に続くうつ病を単に悪化させるだけのようである。急性躁病の治療以外では、躁病の長期予防のエビデンスもないし、双極性障害の場合にはうつ病を悪化させるようである。双極性障害での効果のエビデンスに乏しいことに加えて、伝統的抗精神病薬使用の安全性について問題がある。多くの研究が示しているように、双極性障害患者に伝統的抗精神病薬を使用した場合、シゾフレニーを伝統的抗精神病薬で治療した場合に比較して、錐体外路症状や遅発性ジスキネジアが起こりやすい。双極性障害の場合には伝統的抗精神病薬を回避するか、一時的にのみ使用するかにすべきだと一般に同意されている。しかし最近まで、急性躁病を伝統的抗精神病薬によって治療された入院患者は、急性躁病エピソードが終わっても、伝統的抗精神病薬を中止せずそのまま投与されていた。
17-4 双極性障害における非定型抗精神病薬の効果
伝統的抗精神病薬の欠点を考えると、非定型抗精神病薬が感情障害治療の選択肢として好まれる。これは生化学的理由からも正しい。メカニズムから言うと、ドパミンブロック効果が抗躁病効果を生んでいる。伝統的抗精神病薬はもっぱらドパミンブロック効果を持っているのだから、躁病から気分をダウンさせる。しかし躁病が終わっても気分低下作用は続いてしまい、多くの人はうつ病になってしまう。セロトニン-2ブロック薬はいくらか抗うつ病効果があり、それは5HT-1レセプターの神経伝達物質の増加によるものである。5HT-1系は抗うつ病効果を媒介すると考えられているセロトニンレセプターシステムである。しかし5HT-2ブロック薬はそれ自身は抗うつ病効果は弱いようだ。標準抗うつ薬にはこの5HT-2ブロック効果があり、さらに他の効果もある(たとえば、ネファゾドンでセロトニン再取り込みブロック、あるいは、ミトラザピンでα-2アドレナリンブロック)。
非定型抗精神病薬はそれぞれ、ドパミン系以外の効果の点で異なっており、そのせいで、抗うつ病効果の違いが生じる。 5HT-2ブロック効果に加えて、リスペリドンは強力なα-2ブロッカーである(それはネガティブ・フィードバックループをブロックする。そして結果として、セロトニン系とノルアドレナリン系の伝達物質を増やす)。 オランザピンは前頭葉のセロトニン神経伝達を優先的に増大させる。そのことが抗うつ病効果を生む。 ジプラシドンは三環系抗うつ薬と似て、試験管内でかなり強力なセロトニン再取り込み阻害薬である。 これらの幾種類かの抗ドパミン効果の組み合わせで、非定型抗精神病薬はうつ病に至ることなく抗躁病効果を発揮する(それは双極性障害で最も明白な臨床効果として観察される)。さらに、この生化学的特徴は、この薬群の気分安定薬の性質を説明する。
17-5 急性躁病
結果として、たくさんの二重盲検試験がオランザピンとリスペリドンはに関して急性躁病を対象にして行われた。
一つの二重盲検試験はクロザピン、クエチアピン、ジプラシドンについて行われた。
これらすべての研究で、これら薬剤は急性躁病治療において有効であることが示された。そこで非定型抗精神病薬全体が明白に抗躁病薬として有効であるように思えた。
最初の無作為化臨床試験では、リスペリドンとオランザピンは、急性躁病においてハロペリドールよりも錐体外路症状が少なかった。
この所見は驚きではなく、大切なのはすべての以前の比較はシゾフレニーで行われたのに、双極性障害患者ではより敏感に錐体外路症状を呈すると分かったことだ。
しかしCAITE試験では、非定型抗精神病薬とペルフェナジン(Trilafon)で錐体外路症状にはほとんど差がなかった。
しかし少量のペルフェナジンが使われているものの、ペルフェナジンよりもクエチアピンでアカシジア発生割合が少ないようだった。
——-キーポイント—————————————-
これらの研究の多くで鍵となる知見は、非定型抗精神病薬では、うつ病を悪化させることなく、急性躁病の治療ができることである。 つまり、急性躁病の治療のあとで急性うつ病の治療にスイッチする必要がない。 ここが伝統的抗精神病薬と違うところで、伝統的抗精神病薬はうつ病誘因効果がある。—————————————————————-
17-6 双極性障害予防
7章で述べたように、私は非定型抗精神病薬を気分安定薬とは見なしていない。 これは非定型抗精神病薬の予防効果が維持研究で実証されていないからである。
7章でその理由も述べた通り、双極性障害の維持療法に関して、オランザピンとアリピプラゾールは、FDAでは有効であると認めて適応を許可しているが、私は無効であると考えている。 —–キーポイント——————————————–オランザピンとアリピプラゾールを含む抗精神病薬は、気分安定薬ではないので、リチウムのような効果の証明された気分安定薬の代わりに、双極性障害の長期治療にそれ単独で用いてはいけないと考えている。—————————————————————- 私の見解では、これらの薬剤は、双極性障害の長期治療に単剤で用いてはいけない。リチウムのような実証された気分安定薬の代わりに使うと考えてはいけない。しかし、いくらか役立つのは、実証された気分安定薬に上乗せして使う場合である。長期利益に関しての無作為化エビデンスはあまり強くないので、気分安定薬のみでは安定しないときだけ、非定型抗精神病薬を上乗せで使うのがよい。 17-7 急性双極性うつ病 12章で治療抵抗性単極性うつ病に対しての非定型抗精神病薬の使用を述べた。急性双極性うつ病では、オランザピンが、プラセボよりもわずかに優位であると示されているのみである。しかし、FDAの適応では、急性双極性うつ病に対してオランザピンとフルオキセチンを併用することになっている。また、クエチアピン単独に関しての2つの大規模研究で、急性双極性うつ病でクエチアピンはプラセボよりもかなり有効と結論されており、それもFDAの適応になっている。心に留めておくべきは、これらの適応指定は平均8週間の短期治療に関してのみの結論であることだ。これら薬剤を双極性障害の長期治療として自動的に漫然と続けるのはいけない。予防効果の研究がされたこともないし、予防効果があると証明されたこともない。多くの医師は急性うつ病効果を長期効果と取り違えて誤解している。 この区別は重要である。
——キーポイント————————————-
急性双極性うつ病においてクエチアピンの利益は、真の抗うつ病効果ではなくて、主にうつ病性混合状態に対する効果である。
———————————————————-
私の印象では4章で述べたように、クエチアピンの効果の中身はうつ病性混合状態への効果だろうと思う。DSM-IVの混合状態の定義はかなり狭くて、大うつ病エピソードと3つ以上の躁病症状があるもので、臨床試験では双極性うつ病に含められている。たぶん、大うつ病エピソードを経験した双極性障害患者の半数は少なくとも一回か二回またはそれ以上の躁病症状を経験していると思う。したがって、うつ病性混合状態の基準を満たすだろう。しかしながら、これらの研究はまだ充分に分析されていないので、この疑問に答えてくれない。
生化学的には、最も強力な抗うつ薬効果を持っているのはひとつはジプラシドンで、これはセロトニン再取り込み阻害効果が極めて強く、もうひとつはアリピプラゾールで、これは直接の5HT-1Aのアゴニストである。急性双極性うつ病に対して、アリピプラゾールは、初期の研究では無効、ジプラシドンに関しての無作為化試験はもうすぐ公開されるだろう。アリピプラゾールに関しての初期のネガティブデータは研究デザインの問題として説明されるだろう。私の臨床経験では急性双極性うつ病の一部患者に有効であった。
17-8 非定型抗精神病薬の副作用
17-8-1 遅発性ジスキネジア(TD)
困った神話がいろいろある。遅発性ジスキネジアの危険は時間と共に高くなる。遅発性ジスキネジアは不可逆的である。急性錐体外路症状があればのちのち遅発性ジスキネジアになるリスクが高い。すべての抗精神病薬は遅発性ジスキネジアをひき起こすと証明されている。以上は全部、神話である。しかし、シゾフレニーでは自然発生する遅発性ジスキネジアの頻度と関連している。それは健康若年成人で約0.5%。これは健康者や感情障害患者と対照的であって、これらでは、60歳以下での自然発生的遅発性ジスキネジアは特に高くなっていない。しかし60歳を過ぎると、精神科的ではない病気を持つ一般人口の中で、遅発性ジスキネジアの自然発生率は約0.5%である。これらの自然発生率はおそらく脳の錐体外路の変異を反映しているのだろう。したがって、シゾフレニーでは生涯にわたって遅発性ジスキネジアのリスクがある。それは脳の一部の領域に変異があるからだろう。そして人生の晩年に遅発性ジスキネジアの発生率が高いのは脳機能の徐々に進行する変性が問題の領域に起こる結果だろう。結果として、遅発性ジスキネジアは抗精神病薬とは無関係に起こる。我々の関心は薬剤に関係したリスクにあるので、自然発生的遅発性ジスキネジアを抗精神病薬のせいにしないように注意が必要である。
伝統的抗精神病薬の遅発性ジスキネジアの長期研究でおそらく最も注意深く行われたものは、Yale大学のもので、精神病性疾患(ほとんどはシゾフレニー)をもつ398名の患者について、1985-1993にわたり、8年間、3ヶ月ごとに遅発性ジスキネジア・スケールを用いて、プロスペクティブに追跡した。平均遅発性ジスキネジア発生率は年間約5%で、これは高い。重要な所見は、既存の説と矛盾するのだが、治療の最初の3年間で遅発性ジスキネジアが発生したのは患者のほぼ20%であることだ。最初の3年が過ぎると、遅発性ジスキネジア発生率は、一定になり年間約1%である。思い出してほしいのは、シゾフレニーにおける自然発生的遅発性ジスキネジア発生率は年間約0.5%であることである。したがって、抗精神病薬を服用したことにより上乗せされたリスクは治療の最初の3年を過ぎた時には年間約0.5%になる。以前の遅発性ジスキネジアの文献では、遅発性ジスキネジア全発生率は抗精神病薬治療の約20年後で約40-50%と推定されていた。リスク増大は直線的であるとするのもまた神話である(図17.1)。
Yale研究が示す所では、リスクは漸近線的である。遅発性ジスキネジア発生の半分は治療の最初の数年のうちであり、残りの半分は20年間にわたり徐々に発生している。つまり、Yale研究の担当者が書いているように、一般に信じられているのとは違い、遅発性ジスキネジアの発生リスクが最も高いのは、抗精神病薬で治療された経験のない人が、はじめて抗精神病薬で治療を受ける最初の数年である。19年間にわたり抗精神病薬を服薬してきた患者では、20年目に遅発性ジスキネジアが発生することはまずないといえるだろう。治療の最初の数年が過ぎて、その時点で遅発性ジスキネジアが発生しなかった患者は、相対的に遅発性ジスキネジア抵抗性の患者群であると言える。そのような患者は遅発性ジスキネジアのリスクはかなり低い。以前には抗精神病薬を服用したことのない患者が新しく処方された場合に発生リスクが高い。
—–ヒント———————————————-遅発性ジスキネジアを発症せずに5-10年以上経過した患者では将来の遅発性ジスキネジアの発生を恐れて、抗精神病薬を中止する必要はない。————————————————————- また図17.1について注意して欲しいのだが、これらの症例の全てが不可逆性遅発性ジスキネジアというわけではない。遅発性ジスキネジアはしばしば一過性であり、時間がたてば解決してしまう。先述の報告で遅発性ジスキネジアを発症した人も、数年後にも症状を呈しているわけではないことがある。Yale研究の知見は全般に、他のプロスペクティブな遅発性ジスキネジア研究の多くによって確認されている。ただし、シゾフレニーの高齢者(この研究では60歳以上)の遅発性ジスキネジアのリスクは、さらに高くなっている。いろいろな研究をまとめると、伝統的抗精神病薬による治療の最初の一年では、遅発性ジスキネジアのリスクは25-38%、2年後には34-66%である。従って、高齢患者では1年のうちに、若年成人5年で起こるのと同程度の割合で、遅発性ジスキネジアが発生している。
私がこれらの点を強調したいのは、これらは非定型抗精神病薬では遅発性ジスキネジアのリスクがどの程度なのかを知る我々の能力と関係があるからである。医師からしばしば聞くのだが、我々は非定型抗精神病薬について遅発性ジスキネジアのリスクを評価できるほど十分には経験がない。医師は10-20年かけて追跡して、評価することが必要だと考えている。しかし、伝統的抗精神病薬について以前に出されたデータに基づけば、リスクが高い期間は3-5年であり、非定型抗精神病薬でも同じようなデータが得られる。リスペリドンについて、二重盲検比較対照試験(n=3298)で、臨床患者に最初の一年では、遅発性ジスキネジアの発生が0.6%、それに対してハロペリドールでは2.7%。オランザピンでは、シゾフレニー、統合失調感情症、統合失調型障害の1714名に対して、2.6年間、オランザピンまたはハロペリドールのいずれかでの二重盲検で、1年での遅発性ジスキネジアのリスクはオランザピンで0.52%、ハロペリドールで7.45%(p=0.002)。リスク比は11.86(95%信頼区間CI=2.30,61.14)、従って、遅発性ジスキネジアのリスクはハロペリドールでオランザピンのほぼ12倍高い。リスペリドンとオランザピンを使用したときの遅発性ジスキネジアの発生率は、シゾフレニーでの遅発性ジスキネジアの自然発生率と等しい。もし非定型抗精神病薬が治療の最初の一年で伝統的抗精神病薬と同じくらいのリスクがあったら、ハロペリドールで見られるのと同じ程度で、5-10%の範囲での発生率を予想するところだ。治療の最初の一年は遅発性ジスキネジアの最大の危険期間である。リスペリドン使用での遅発性ジスキネジアのリスクはまた、シゾフレニーのハイリスク高齢者で研究されていて、治療9ヶ月時点でリスペリドン使用では遅発性ジスキネジア発生率は約5%、一方ハロペリドールでは30%(全n=122)であった。
私は、遅発性ジスキネジアは非定型抗精神病薬で起こらないと主張しているのでもないし、起こったとして非定型抗精神病薬のせいではないと言っているのでもない。しかしそのような遅発性ジスキネジアは非常にまれであり、非定型抗精神病薬により起こった遅発性ジスキネジアは軽症であると考えてよい十分なエビデンスがある。
CATIE研究で以前に遅発性ジスキネジアがあった患者はベルフェナジン治療から除外されており、従って、遅発性ジスキネジアリスク比較は非定型抗精神病薬と定型抗精神病薬の間ではできないことになる。
2013-03-27 19:39