"最近は下は小学校から上は研究者にいたるまで何かについて意見をまとめて発表するのが流行であり義務である。小学校では、本を宣伝するための「帯」を書かせる活動をやらせているし、研究者はpublishすることがなによりも大事な仕事になっている。「創造」が大事なのだ。しかし、そんな「創造」よりも、知識を無駄にため込んでいるような「偉大なる暗闇」的な存在のほうが、筆者には、「発信型」(なんという無残な言葉だろう)の時代にはかえって尊いような気がしてしまう。バイヤールが創造的であることは大事なことだ、と大真面目に言っているのを読むと、みんなが他人の文章をちゃんと読まずにどんどん「創造」しちゃうから、つまらない読み物が増えてしまうんじゃないんですか、とこちらも真面目に反応してしまう。
本は読めば読むほど、文章は読むものであって書くものではないという意識を読者に植え付け、読者を身動きのとれない状態にしてしまうという。そういう一面があることはたしかに事実で、本は読めば読むほど自分の無知と無能力を思い知らされることがしばしばだ。読書で忙しくて論文を生産しない、あるいは生産できない学者さんはいくらでもいる。"