原油価格がバレル90ドルを割り込み始めた10月の始めから70ドル台ま
で下げていた11月下旬頃までは、エネルギー消費国にとっては有難い原油
安だった。しかし、最近の歯止めの効かなくなった原油価格の下落は、ユー
ロ圏を中心としたデフレ懸念を強め、当初は全てが有利に進むと考えられて
いた米国のエネルギー政策にとっても障害になり始めている。原油をほぼ1
00%輸入に頼る日本にとっても、輸入物価の押し下げには好都合だが、政
府・日銀が当初目標に掲げた2015年4月までの2%物価安定目標の達成
には、思わぬ大誤算になってしまっている。依然として石油輸出国機構(OPEC)
が減産する構えを見せず、昨夜も UAEの石油相がバレル40ドルになっても
減産しないとの発言もあって、一部では反発すると思われていた50ドル台
でも下げ止まりそうもない。今回の原油価格大幅下落の発端が、イスラム国
によるイラク原油の低価格での闇輸出によるものだとの指摘もあり、中東産
油国、石油消費国米国、イスラム国間の水面下の動きが今後の金融市場に大
きく影響しそうだ。