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山中 独創的な取り組みとして、東大の中内啓光教授のチームは、iPS細胞の技術を使ってブタの体内で人間の臓器を作る実験を計画しています。
稲盛 ほう、そんなことまでできるんですか。
山中 まだ人間のiPS細胞を使っては成功していないんですが、ネズミのモデルでは成功しています。ネズミにはマウスとラットの2種類があり、ラットの膵臓をマウスの体内で作ることに成功していますので、同じ技術を使えば、ブタの体内で人間の膵臓や肝臓といった臓器を作ることは理論的には可能と思います。
稲盛 どうやって作るんですか。
山中 中内教授のチームが計画している実験は、まず特定の臓器が欠けるよう操作したブタの受精卵(胚)に、ヒトのiPS細胞を移植して「動物性集合胚」(動物の胚にヒトの細胞を入れてできる胚)を作り、それをブタの子宮に着床させるというものです。欠けた臓器の場所にヒトの細胞からできた臓器を持つブタが生まれれば、その臓器を将来、移植医療や新薬の開発に応用できる可能性があります。日本では動物の受精卵にヒトの細胞を入れて子宮に戻すのは、研究指針で禁止されていましたが、13年夏、中内教授の研究を踏まえて、政府の生命倫理専門調査会が基礎研究は条件付きで容認しました。議論は始まりましたが、生命倫理の議論は時間がかかりそうです。
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