衝動的で落ち着きがなく、授業に集中できず、不注意でボーっとして、呼びかけられても気がつかない子供たち。こうした注意欠陥多動性障害(ADHD)の子供たちについては、医療や教育の現場で対応策が講じられ、診断・治療はもちろんのこと、社会的なサポートネットワークも構築されつつあります。 小児期の発症率 わが国では小児の20人に1人はADHD  ADHDは広汎性発達障害(PDD)や学習障害(LD)と共に発達障害と呼ばれています。発達障害とは脳機能の極めて軽度な発達上の障害で、以前は親の躾や本人の性格が原因と考え

衝動的で落ち着きがなく、授業に集中できず、不注意でボーっとして、呼びかけられても気がつかない子供たち。こうした注意欠陥多動性障害(ADHD)の子供たちについては、医療や教育の現場で対応策が講じられ、診断・治療はもちろんのこと、社会的なサポートネットワークも構築されつつあります。
小児期の発症率
わが国では小児の20人に1人はADHD
 ADHDは広汎性発達障害(PDD)や学習障害(LD)と共に発達障害と呼ばれています。発達障害とは脳機能の極めて軽度な発達上の障害で、以前は親の躾や本人の性格が原因と考える人も少なくありませんでしたが、今では脳の認知機能に問題があるため、さまざまな症状を呈していることが明らかになっています。そこで、家族や周囲の人が発達障害の本質を知って、適切な支援を行うことが求められています。
 ADHDの主症状は不注意(注意欠損)、多動性、衝動性で、米国の『精神疾患の分類と診断の手引き第4版』(DSM-Ⅳ-TR)では、これらの症状が7歳以前からみられ(早期性)、6ヵ月以上続き(持続性)、複数の場面でたびたび観察され(広汎性)、社会面や学業面で著しい障害が認められることを付帯条件とし、PDD、統合失調症、うつ病などを除くと定められています。つまり、注意力、欲求、感情を自分自身でコントロールする能力が十分に身についておらず、自己中心的な行動が幼児期から持続している状態がADHDです。
 ADHDは決して少なくなく、わが国における学童期の発症率は3~5%といわれていますので、1クラスに1~2人はADHDの学童がいることになります。