“ オープンなマーケットで、みんながコンテンツをつくれるようになるほど、コンテンツの実質的な多様性は減るっていうのが僕の持論です。数が多いということは、ある解にむかって自動的に収束していくってことですからね。 —— 実質的な多様性が減る、とは? 川上 例えば、「小説家になろう」っていう小説投稿サイトがあるんですけど、そのランキング上位の小説の設定がほとんど一緒になってたりするんですよ。だいたい転生もので、主人公が生まれ変わって、別の人生を歩んで、活躍するっていうストーリーです(笑)。 —— ユーザー

オープンなマーケットで、みんながコンテンツをつくれるようになるほど、コンテンツの実質的な多様性は減るっていうのが僕の持論です。数が多いということは、ある解にむかって自動的に収束していくってことですからね。
—— 実質的な多様性が減る、とは?
川上 例えば、「小説家になろう」っていう小説投稿サイトがあるんですけど、そのランキング上位の小説の設定がほとんど一緒になってたりするんですよ。だいたい転生もので、主人公が生まれ変わって、別の人生を歩んで、活躍するっていうストーリーです(笑)。
—— ユーザーの願望が(笑)。
川上 投稿されている小説の中には本来多様性があるはずなんだけど、ランキング上位に来るものは全部似たようなものになる。ニコ動だって、いろいろな作品が投稿されていますが、何かが流行るとそれ一色になりがちです。参加数が多いってことは、逆に実質的な多様性を減らす効果があるんです。

川上 いま、好きなアニメをつくれるのはジブリくらいですよね。ジブリには独自のブランドがあって、ジブリが相手にしているマーケットには、競争相手がいないからです。もし、ジブリみたいな会社が100社あったら、その中で競争しあうので、みんなが “表面上” 観たいと思っている作品しかつくれませんよ。例えば、『天空の城ラピュタ 2』とか。
—— たしかに、マーケットの要望に答えたら、『天空の城ラピュタ 2』になっちゃいますね。観たいですもん。
川上 そういう作品が大量にできると思いますよ。でも、ジブリみたいな会社は1社しかなくて、ジブリがつくったものが観たいというお客さんがたくさんいるから、作品に多様性が生まれるんです。