境界型人格障害 Borderline Personality Disorder DSM-5診断基準の草案
A. 以下の様に示される人格機能の重大な障害
1. 自己機能の障害(aまたはb)
a. 同一性: しばしば過度の自己批判と関連した、著しく貧困または発達不十分または不安定な自己像; 慢性的な空虚感; ストレス下での解離状態
b. 自己の方向性: ゴールや向上心や評価や人生計画の不安定性
そして
2. 対人機能の障害(aまたはb)
a. 共感: 対人的な過敏性(すなわち軽視あるいは軽蔑されたと感じる傾向)に伴う他者の感情と要求を認識する能力の問題; 否定的な特性や傷つきやすさに選択的に偏って他者を認識すること
b. 親交: 不信と、貧困さと、実際にあるいは想像上の見捨てられに伴う不安を伴った先入観に特徴づけられた、感情的で不安定でぶつかり合う緊密な関係; しばしば理想化とこきおろしの両極端な認識を持ち、そして巻き込みと立ち去りの間を揺れ動く緊密な関係
B. 以下の領域で示される病的な人格傾向
1. 否定的な感情の持ちやすさ
a. 感情の不安定性: 不安定な感情体験と頻繁に生じる気分の変化; 容易に興奮し、激しく、そして/または出来事や状況と不釣り合いな感情
b. 心配性: しばしば対人関係におけるストレスに反応して神経質さや緊張やパニックを強く感じること; 過去の不幸な体験と将来の否定的な可能性が負の影響を及ぼすことへの悩み; 不確実なことに脅威や不安、恐怖を感じること; 駄目になる、あるいは制御を失うことへの恐怖
c. 分離不安: 過度の依存と自立性の完全な欠如に伴う恐怖に関連した、重要な他者に拒絶される、そして/または離れることへの恐怖
d. 抑うつ: 落ちた、みじめな、そして/または絶望的な気持ちが頻繁に生じる
2. 以下によって特徴づけられる抑えの無さ
a. 衝動性: 目前の刺激に反応した衝動的な行動; 結果への考慮や計画なしに即時的な考えに基づく行動; 計画を立案する、あるいは計画に則ることの困難さ; 切迫感と、感情的な苦痛のもとでの自傷行為
b. リスクテーキング: 危険で、損失が生じうる、そして潜在的に自己損害的な行動を不必要に、そして結果を考えずにとること; 自分の限界に対する認識を欠き、自分自身の危険の現実を否定すること
3. 以下によって特徴づけられる対立傾向
a. 敵意: 持続的あるいは頻繁な怒りの感情; 些細なことに反応した怒りや苛々、そして短気さ
C. 人格機能の障害とその個人の人格傾向の表れは、時間を通じて、そして状況を通じて比較的一定している。
D. 人格機能の障害とその個人の人格傾向の表れは、物質(例えば薬物乱用や薬物治療)または一般的身体疾患(例えば重度の頭部傷害)の直接的な生理学的作用によるものではない。