季節性、自殺、セロトニン、SSRI Seasonality, Suicide, Serotonin, and SSRIs 男性では自殺に季節性のピークがあり、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)服用患者で顕著である。 自殺率は春と初夏にピークを迎えると報告されており(JW Psychiatry Jun 7 2010)、セロトニン作動性神経伝達系の「年周期」変動パターンがその原因の1つとされている。複数のセロトニン関連指標に年間を通じて系統的な変動がみられるからである。本論文の著者Makrisら

季節性、自殺、セロトニン、SSRI
Seasonality, Suicide, Serotonin, and SSRIs
男性では自殺に季節性のピークがあり、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)服用患者で顕著である。
自殺率は春と初夏にピークを迎えると報告されており(JW Psychiatry Jun 7 2010)、セロトニン作動性神経伝達系の「年周期」変動パターンがその原因の1つとされている。複数のセロトニン関連指標に年間を通じて系統的な変動がみられるからである。本論文の著者Makrisらはスウェーデンの登録から12,448例の自殺(男性72%)を含む1992~2003年のデータを入手し、抗うつ薬の種類によってこの季節性の影響の大きさが異なるかどうかを検討した。
男性の9%、女性の15%に選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の使用者が特定された。他の抗うつ薬使用者の割合は男女それぞれ8%と14%であった。暴力的手段による自殺の割合は男女それぞれ74%と56%、自殺前5年間に入院治療歴のある割合はそれぞれ33%と50%であった。女性では自殺した“月(month)”に関して一定の傾向はあったが、統計学的に有意な関連は認められなかった。男性では6月の自殺リスクが、12月における自殺リスクと比較し、SSRI服用者において42%上昇、抗うつ薬非服用者では12%上昇し、両群間の差は有意であった。SSRI以外の抗うつ薬を服用していた男性では自殺に季節性の変動パターンはみられなかった。季節変動による自殺リスクの振幅がもっとも大きかったのは、SSRI服用者で入院治療歴のない男性であった(相対リスク[RR] 1.56)。暴力的手段による自殺は、男性の抗うつ薬非服用者に比べ、SSRI服用者において頻度が高い傾向にあった。
コメント
6月の男性におけるSSRI関連自殺のリスクは、春期に関連した自殺リスク上昇に関して先行研究が報告した値(20%以下の上昇)よりもおよそ2倍高かった。SSRI以外の抗うつ薬服用者では自殺に季節性がみられず、入院治療歴のある患者のほうが自殺リスクは高かったことから、これらの結果は単に治療抵抗例の自殺率が高いことを反映しているわけではないと考えられる。著者らはいくつかの仮説を検討したうえで、SSRIには内因性セロトニンの変動を増大させる付加的作用があり、その結果として季節性の自殺傾向が増強されるのではないかと考えている。これらの結果はSSRIと自殺傾向の関連について過剰な懸念を再燃化させるものではなく、臨床医がうつ病患者の治療においてSSRIを開始するときは経過を慎重に観察する診療の重要性を支持している。