母親の周産期におけるマイナス思考は世代を超えて影響を及ぼす
Mothers' Perinatal Negative Thinking Has Intergenerational Effects
妊娠中の否定的な考え方は18年後に調べた青年期の子の否定的な認知様式と関連している。
うつ病の認知理論では、自己、世界、将来に関する否定的な思考システムの役割、ならびに否定的な刺激に指向させるバイアスのような、より根底にある認知傾向性に注目が集まっている。遺伝要因と環境要因はいずれも認知様式(cognitive style)に影響を与えるが、主要な決定因子は現在、早期の体験に起因するとされており、とくに主たる養育者、なかでも母親が起こす出来事(イベント)に説明を求めようとする試みがある。本論文の著者Pearsonらは英国の大規模縦断的コホート研究(Avon Longitudinal Study of Parents and Children cohort study)から入手したデータを用いて、1990年代初めに妊娠中に評価を受けた母親2,528例の認知様式について、子どもが平均18歳のときに収集された認知様式およびうつ病評価尺度との比較を行った。
研究者らは認知様式に関連するさまざまな要因(年齢、教育水準、社会的階層、婚姻状況、喫煙、妊婦うつ病評価尺度、子の性別とうつ病)で補正し、いくつかの解析モデルを用いて検討した。母親の周産期における抑うつ性(depressogenic)認知様式は子の抑うつ性認知様式と相関し、母親の認知様式スコアの1 SD(標準偏差)上昇は子の認知様式スコアでは0.1 SDの上昇に相当した。母親の抑うつスコアは子の抑うつスコアと関連していた。子の認知様式は子の抑うつスコアと関連していた。単変量解析において、母親のうつ病と子の認知様式に関連が認められた。母親の認知様式は子のうつ病と関連していたが、子の認知様式で補正すると関連性は認められなくなった。“path-analytic model”を用いた解析において、母親と子のうつ病の関連のうち21%は母親と子の認知様式により説明された。
コメント
本研究では、子が成長過程のときの母親の認知様式ならびに母親と子が共有する認知様式に対する潜在的遺伝要因の寄与に関する情報が欠けている。しかしながら、これらの知見は、母親の認知様式および関連する育児への取組み方に対して治療の視点から注意を向ければ、子における抑うつ性認知および臨床的うつ病のリスクを低減させうることを示唆している。