“ 無茶なことをいう人が増えた 「あと4時間したら海外に出かけるから、今からこの下痢を止めて下さい」とか、子供が怪我して、明日朝からそれでも家族旅行だから、「明日の外科外来には来ないけれど何とかして下さい」とか、そういうことを言う患者さんは昔からいるんだけれど、最近増えた。これがせめて、来週から旅行だから、念のため抗生物質一式下さいとか、明日は病院に来られないから消毒セット一式下さいとか、そういう依頼ならばあるいはまだしも何とかなるし、相談の余地もあるんだけれど。 「コンビニ受診」というのはもう日常用

無茶なことをいう人が増えた
「あと4時間したら海外に出かけるから、今からこの下痢を止めて下さい」とか、子供が怪我して、明日朝からそれでも家族旅行だから、「明日の外科外来には来ないけれど何とかして下さい」とか、そういうことを言う患者さんは昔からいるんだけれど、最近増えた。これがせめて、来週から旅行だから、念のため抗生物質一式下さいとか、明日は病院に来られないから消毒セット一式下さいとか、そういう依頼ならばあるいはまだしも何とかなるし、相談の余地もあるんだけれど。
「コンビニ受診」というのはもう日常用語だけれど、コンビニエンスストアが提供している価値というのは、たぶん「予期の代行」なのだったのだろうと思う。
昔だったら「どうしてちゃんと考えて準備しなかったんだ」とか、「こうなることを何で想像できなかったんだ」とか怒られるような状況でも、今ならコンビニエンスストアがあるから、そこにでかければ、たいていのことはけっこう何とかなってしまう。
全国にコンビニエンスストアが普及して、もうそれが当たり前になってしまったものだから、あらかじめ計画を立てるとか、必要なものを前もって準備するとか、そういう能力は、そこにあるコンビニエンスストアに任せられるようになって、結果としてもしかしたら、準備ができるとか、あらかじめ見越せるだとか、そういう能力の価値というのは、今はもうずいぶん低くなってしまった。
「今すぐ何とかしろ妥協はゆるさん」という患者さんはたぶん、何かを計画するとか、状況が変わって、次にどうするとか、そういう予期に、価値を認めていないような気がする。それは価値のない考えかただから、そもそも考えないし、何があっても「今すぐお前が何とかすればいい」という解答が、真っ先に返ってきてしまう。