“ でも、独居老人って、そんなに憐れむべき存在だろうか。統計によれば高齢者の自殺率で、いちばん多いのが3世代同居、いちばん低いのがひとり暮らしだという。ひとりで生きることの寂しさやつらさより、家族関係のもつれのような、ひととひととのごちゃごちゃのほうが、はるかにひとのこころを壊すのだ。 これまでずいぶんひとり暮らしの、ものすごく元気な老人たちに出会ってきた。世の中的には「独居老人」とひとくくりにされる、そういうおじいさんやおばあさんは、だれもたいして裕福ではなかったけれど、小さな部屋で、若いときからずー

でも、独居老人って、そんなに憐れむべき存在だろうか。統計によれば高齢者の自殺率で、いちばん多いのが3世代同居、いちばん低いのがひとり暮らしだという。ひとりで生きることの寂しさやつらさより、家族関係のもつれのような、ひととひととのごちゃごちゃのほうが、はるかにひとのこころを壊すのだ。
これまでずいぶんひとり暮らしの、ものすごく元気な老人たちに出会ってきた。世の中的には「独居老人」とひとくくりにされる、そういうおじいさんやおばあさんは、だれもたいして裕福ではなかったけれど、小さな部屋で、若いときからずーっと好きだったものに埋もれて(それが本だろうがレコードだろうが、猫だろうがエロビデオだろうが)、仕事のストレスもなく、煩わしい人間関係もなく、もちろん将来への不安もなく──ようするに毎日をものすごく楽しそうに暮らしてる、年齢だけちょっと多めの元気な若者なのだった。