“
そういえば前に読んだ本の中に、千年以上も前の和歌とか小説とか随筆なんかを、今の時代の私たちが原文で読むことができるのは、奇跡のようなことなのだと書かれてありました。
私たち日本人はそれを当たり前のことのように捉え、ふだんほとんど意識せずにいますが、言語を失った民族はそういう恩恵には預かれないんですよね。
言語が失われれば、歴史や文化も失われていきます。やがて民族そのものが地球上から消えてしまう。
それを思うと、他民族に一度も征服されることなく、民族の歴史——言語、文化、伝統、さらには感性、情緒性なども含めて——を何とか維持し続けてこられた日本人は、幸運だったとしか言いようがありません。
”