採録
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むしろ専門家がそろって警戒するのが、TPPの知的財産分野だ。福井弁護士は「TPPはネット規制を相当に強める。
今後のネットの主戦場はTPPだ」とみる。
米国は知財・情報項目をTPPの重要分野と位置付けている。コンテンツとITは、米国最大の輸出産業だからだ。
TPPも徹底した秘密交渉が貫かれているが、知財分野では米国の条文案がNGOなどを通じて外部に流出している。
その流出文書には、(1)著作権保護期間の大幅延長(2)著作権・商標権侵害の非親告罪化(3)法定賠償金制度の導入-といった要望の柱が並ぶ。
著作権の延長は「ミッキーマウス」などの古いコンテンツで稼ぐ米国としては、長ければ長いほど都合が良い。世界の著作権保護期間は米国などの「死後七十年国」と、日本などの「死後五十年国」が拮抗(きっこう)している。
法定賠償金の導入は、著作権侵害に伴う損害賠償についてだが、日本では通常、権利者などが被る実損害分しか賠償を求めることができず、弁護士費用にも足りないケースが少なくない。
これに対し、法定賠償金では実損害の有無にかかわらず、裁判所がペナルティーも含めた金額を決めて賠償金の支払いを命じることができる。米国での相場は、故意の侵害で一作品当たり一千万円強にも上るという。
日本に法定賠償金が導入されれば、知財訴訟が激増する可能性がある。ネット使用者からすれば、ツイッターのアイコンにアニメのキャラクターを使うような軽微な著作権侵害でも訴えられやすくなるわけだ。
福井弁護士は「日本人は裁判が苦手だ。訴訟国家の米国のルールを急に持ち込めば、日本社会が混乱する可能性がある」と指摘する。
こうしたTPPの大波に対し、どう向き合っていけばいいのか。
斎藤議員は「ツイッターは、脱原発デモで大きな役割を果たしている。ACTAでは、市民がネット上で情報を発信し、政治家が問題点に気が付くことがあった。TPPでも市民と政治家、専門家が連携していくことが大切だ」と説く。
福井弁護士は「TPPの知的財産分野は、過去に日本国内で激論を招いた政策ばかりだ。国内では容易に実現できないものを秘密交渉で逆輸入しても、国民が受け入れるとは思えない。万人が当事者である知財・情報のルール作りは、どんなに大変でもオープンに議論するしかない」と主張している。
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とのことです