喫煙および農薬への曝露が、睡眠中にキックやパンチなどの動きがみられるレム睡眠行動障害(RBD)のリスクファクターであることを、新しい研究が示した。この障害は本人や一緒に寝ている人に危険をもたらすことも多いが、最も大きな懸念の1つは、BRDがパーキンソン病やレヴィー小体認知症(DLB)の早期徴候である場合がある点だと専門家は述べている。
「Neurology(神経学)」オンライン版に6月27日掲載されたこの研究は、RBDの危険因子に着目した初めてのもの。研究著者のカナダMcGill大学(モントリオール)准教授のRon Postuma氏は、「これまでにわかっていたのは、男性および高齢の患者が多いという傾向だけだった」と述べ、RBDの危険因子がわかれば、パーキンソン病やDLBに関する理解も進むはずだと付け加えている。
睡眠の異なる段階で発生する夢遊病などの症状に比べると、RBDは稀であるという。これまでの研究からRBD は200人に1人にみられることがわかっており、RBD患者の38~75%がパーキンソン病やDLBなどの神経変性障害を併発する。
今回の研究は、米国、カナダ、ヨーロッパおよび日本の睡眠外来を訪れたRBD患者約350人を対象としたもの。平均年齢は67歳で、81%が男性であった。すでに受診している患者を対象としたため、被験者は比較的重症の傾向がみられたが、パーキンソン病および認知症はなかった。睡眠時無呼吸症候群、不眠症など、RBDとは無関係の睡眠障害のある患者281人、睡眠障害のない129人を対照群とした。
その結果、RBDの最大の危険因子は、パーキンソン病の危険因子でもある農薬への曝露であることが判明。RBD患者は就業中に農薬に曝露していた比率が対照群の2倍以上だった。仕事以外での農薬への曝露では関連はみられなかった。また、RBD患者は対照群に比べ、パーキンソン病およびDLBの危険因子でもある頭部外傷の比率が59%高く、平均就学期間が約1.5年短かった。一方、カフェイン摂取と喫煙にはパーキンソン病に対する防護効果が認められているのに対し、カフェイン摂取とRBDリスクとの間に関連はみられず、喫煙によるRBDリスクは43%増大した。ただし、今回の研究は因果関係を示すものではない。
パーキンソン病の一部は運動野を侵す前に睡眠にかかわる脳領域で神経変性をもたらすと、Postuma氏は説明している。同氏は、RBDの症状がある人は神経内科を受診すべきで、パーキンソン病やDLBを予防することはできないが、最善の疾患管理が可能になるとしている。また、RBDも治療可能であり、睡眠中に筋肉を弛緩させるクロナゼパムが一般的に使用されるという。Postuma氏らは現在、家族歴や特定の薬剤および疾患など、RBDリスクを増大させる他の因子について検討している。