NHKのページから
今、企業にとってうつ病を中心としたメンタルヘルスの問題は緊急の課題となっている。特に最近、大きな注目を集めているのが「現代型うつ」とも呼ばれる、新しいタイプのうつだ。現代型うつは、若者に多いとされ、従来型のうつ病と同様、不眠や気分の落ち込みなどの症状を呈する一方、常にうつ症状に陥っているわけではないのが特徴だ。職場を離れると気分が回復し、趣味や旅行など好きなことには活動的になり、うつになった原因は自分ではなく、職場など他人にあると考える自己中心的な性格がよく見られるという。さらに現代型うつは一見、“怠け”や性格の問題と捉えられることも多く、従来の抗うつ薬が効きにくいとされ、対応が難しいのが現状だ。また精神科医療の現場でも、現代型うつの患者は急増しており、日本うつ病学会でも対応策を模索し始めている。
「会社には行けないけど、遊びには行ける」というのは、本当に病気なのかと疑いたくもなります。ただ、“うつ”の症状があり、本人がつらいのは間違いない。そして“新型うつ”は間違いなく増えているのだから、何かしら社会の“ゆがみ”が出ているのだろうから、向き合っていかなければならないのではないか。そんな思いから取材を始めました。
生活習慣やコミュニケーションの取り方の指導など対応を模索する企業、失敗させまいと進学先や就職先の確保に奔走する親たち…。“新型うつ”を取り巻く状況から浮かび上がってきたのは、従来の社会の価値観に適応させようという“大人”と、適応できない苦しみを抱えた“若者”のギャップでした。
今回取材に加わっていただいた江川紹子さんは「どんな時に働いて幸せを感じるかという価値観が多様化して、社会がそれに対応できているかが問われている」と発言されていました。放送後、「会社中心の在り方だから新型うつが増え続けてしまう」、「ただのわがままな若者だ」など、番組には賛否両論、さまざまな意見が寄せられました。
教育の在り方や子育ての環境、社員教育や働き方まで、背景は複雑で一つの正解が出るものではないですが、「新型うつ」を入口に、今後の日本社会のあり方を考えるきっかけにしていただければと思っています。
ディレクター 真野修一
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いろいろな意見から
・典型的なうつ病と比べて、新型うつの患者は若い世代に多い。主要な患者層は20代から30代。
・真面目で勤勉な性格の持ち主が多いと言われている旧来のうつ病患者の場合と違って、新型うつ病の患者は必ずしも生真面目なタイプではない。
・伝統的なうつ病の患者が自罰的(自分を責める)であるのに対して、新型うつ病の患者には他罰的な傾向が目立つ。
・伝統的なうつ病では、あらゆる活動が困難になる。ところが、新型うつ病の患者は、出勤を回避したがる一方で、レジャーや旅行には積極的に取り組む。
このほか、「休職期間中に海外旅行をしていた」「仕事には出て来れないと言うくせに、合コンには積極的だった」といったような、「患者」の具体例を紹介。
新型患者激増の背景を探りつつ警鐘。
・「うつは心の風邪だ」という厚労省発の「うつ受診奨励キャンペーン」による受診ハードルの低下が軽症うつ患者の来院を激増させた。
・患者の自己申告を信用せざるを得ない「うつ」診断に内在する問題点が表面化した。
・患者数を増やすことによってしか採算を確保できない精神科医が、三分診療で診断書を乱発している。
・新たに認可されたSSRI(向精神薬)を売りたい製薬会社の意向が安易な診断を生んでいる。
「不可解な若者たち」
・苦難に直面することを嫌う傾向。
・忍耐や努力を冷笑する人生観。
・弱さや根気の無さを「個性」として主張する教育の成果。
・ゲームの中で育てられた脆弱な自我。
・少子化の世界で大切に育てられた子供の成れの果て。
つらいことに直面したら逃げる、自分の利益を最優先する――易きに流れる人々が蔓延する
「化粧とネイルが完璧な患者」「休職中も給料満額」「厳しくすると治る」