前頭側頭葉変性症(FTLD)はその昔 Pick 病と呼ばれていた疾患群である。Alzheimer 病(AD)が疾患
的に均質で、その固有病変はび漫性に発現するため脳は全般的、対称的に萎縮する。これに対し、Pick
病では前頭葉と側頭葉またはそのいずれか一方が限局性に萎縮する。従ってしばしば、左右差があり、
症状群も多彩であった。今日この様な定義に合致する疾患は実に多数存在することが知られ FTLD として
一括される結果となった。そして FTLD に属する疾患群の一方は tauopathy を呈して AD 関連疾患(CBD,
PSP)に連なり、他方はTDP-43 proteinopathyを呈してMND/ALSに連なる事が明らかになってきた。中枢
神経系が原発性に侵される大きな2つの難病変性疾患群、FTLD と MND/ALS の本体がこの₂₁世紀初頭に
ようやく暴かれようとしている。本稿では FTLD-ALS の剖検例の提示を契機に、文献レヴユーと共に、
臨床病理学的観点より FTLD が包括する疾患群の新分類を提案した。この知識が将来 FTLD の診断と治療
の進歩の基礎を提供することになることを期待する。
HirosakiIryoFukushi_1(1)_1.pdf