精神障害者の就労を支援 定着目指し、きめ細かく 雇用義務化で企業も意欲 2015年6月24日(水)配信共同通信社  うつ病や統合失調症など精神障害のある人の就労を支援する動きが強まっている。技能訓練や、面接など就職活動対策を行う事業所を全国展開している会社は、就職した後の定着にも注力。2018年度から精神障害者の雇用が義務付けられるのを控え、採用に積極的な企業も増えている。  ▽不安  東京都千代田区の障害者のための就労移行支援事業所「ウイングル」。オフィスのような雰囲気の中「こんにちは」と明るい声

精神障害者の就労を支援 定着目指し、きめ細かく 雇用義務化で企業も意欲
2015年6月24日(水)配信共同通信社
 うつ病や統合失調症など精神障害のある人の就労を支援する動きが強まっている。技能訓練や、面接など就職活動対策を行う事業所を全国展開している会社は、就職した後の定着にも注力。2018年度から精神障害者の雇用が義務付けられるのを控え、採用に積極的な企業も増えている。
 ▽不安
 東京都千代田区の障害者のための就労移行支援事業所「ウイングル」。オフィスのような雰囲気の中「こんにちは」と明るい声が響き、利用者とスタッフが一緒に作業をしていた。
 20代の男性利用者は「社会に出て働きたいと思ったが、療養期間も長く一人で就活することに不安があった」と打ち明ける。大学院に通っていた2年前、うつ病にかかったが、徐々に回復し事業所に通う。経理代行企業での実習を終え、簿記試験を受ける予定。「受講したプログラムで経理に興味を持った。経理の仕事に就きたい」と笑顔で話す。
 就労移行支援事業所は障害者総合支援法で定められた福祉サービス事業。就労を希望する精神障害者は多いが、支援のことはあまり知られておらず、一人で悩む人も多いという。
 ▽就職後も
 全国48カ所で「ウイングル」を展開する企業「LITALICO(リタリコ)」(東京)は、身体障害や発達障害のある人も含め年間約2千人の利用者がいる。14年度は849人が就職、うち6割が精神障害者だ。
 利用者は平均で約9カ月間、働くための準備をする。まず、事業所に決まった時間に通い、生活のリズムをつくる。続いてビジネス文書の作成方法といった基本的なスキルを学ぶ。企業インターンを体験した後、希望する企業を選び履歴書作成や模擬面接を実施、本格的に就職活動を始める。
 スタッフの梶原真也(かじはら・しんや)さんは「自己分析が重要。どんなときに症状が出やすいかなど障害を客観的に捉えて、企業側に伝えることも大切だ」と話す。
 就職後も「定着支援」に取り組む。利用者、企業、事業所の三者面談の機会を設け、仕事が続けられるよう半年~1年間、きめ細かく支援する。
 リタリコ広報の三谷郁夫(みたに・ふみお)さんは「自立した生活には長く安心して働けることが重要。職場定着率が高まれば雇用する側のメリットにもなる」と指摘する。
 ▽即戦力
 IT関連企業のトランスコスモス(東京)は、13年から本格的に精神障害者を受け入れ、現在はウェブエンジニアや翻訳スタッフら17人が働く。「真面目で技術力が高い方が多く、即戦力になっている」と採用担当の織田智美(おだ・さとみ)さん。
 精神保健福祉士の資格を持つ人を採用し、定期的な面談や体調・就労時間の管理などサポート態勢を充実させている。
 厚生労働省によると、全国のハローワークを通じ14年度に就職した障害者の延べ人数は、前年度比8・6%増の8万4602人。うち精神障害者は17・5%増の3万4538人と急増した。雇用義務化が背景にあり、今後も増加する見通し。企業側の受け入れ態勢整備も急務だ。