田原総一朗「安倍首相の安保政策は米国『対日レポート』の丸写しだった」
集団的自衛権の行使容認を柱とする安全保障関連法案が国会で議論されているが、ジャーナリストの田原総一朗氏は、米国のあるレポートと日本の安保関連法案の内容が同じだと指摘する。
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国権の最高機関である国会の場で、自民党が推薦した長谷部恭男氏を含む3人の憲法学者が、いずれも安保関連法案を「憲法違反」だと指弾した。
政府、自民党は「『違憲じゃない』という著名な憲法学者もいっぱいいる」などと主張したり、1959年の砂川事件の判決を持ち出したりして、世論、マスコミ、野党の批判を強引に封じ込めようとしているが、「いっぱい」とは誰かと問われた政府の答弁者は3人の学者の名前しかあげられなかった。まるで子供のケンカだ。それに、砂川事件の判決を引き合いに出すことは、昨年7月の閣議決定のときには公明党が反対したため封印していたはずである。
とにかく安倍内閣は、何が何でも、それも急ぎに急いで安保関連法案に決着をつけようとしているようだ。各紙の世論調査で国民の約8割以上もが「説明が十分でない」と答えているにもかかわらずである。
なぜ安倍内閣はこうも強引なのか。そのことを日米間の表裏の事情に通じた元外務官僚に問うと、「第3次アーミテージ・ナイ・レポート」なるものを紹介された。アーミテージは共和党政権時代の国務副長官であり、ナイはハーバード大学教授で元国防次官補(民主党系)だ。私自身、アーミテージには2度インタビューしたことがある。日本政府に強い影響力を持っている人物である。
そのアーミテージとナイが、2012年の8月15日に日米同盟に関する「第3次レポート」を発表しているのだ。海上自衛隊幹部学校の「戦略研究会」がホームページ上のコラムで概要を紹介している。
それによると、レポートの内容は「日本が今後世界の中で『一流国』であり続けたいのか、あるいは『二流国』に甘んじることを許容するのか」と厳しく問いただすものだという。そして、日本は今後とも「一流国」として国際社会で一定の役割を果たすべきだとし、そのためには自衛隊について「時代遅れの抑制」を解消すべきだと主張している。「時代遅れの抑制」とは、私が思うに「専守防衛」「一国平和主義」のことではないか。
さらに、中国が尋常ならぬ軍備拡大をはかる中で、日米同盟の強化が必要だとも指摘している。この時期にはまだ南シナ海での中国の強引な人工島づくりは進んでいなかったが、埋め立てが進み、もしもフィリピンなどの国々と何らかの事態が起きれば、日本がしかるべき行動をとることを求めているのであろう。
そして、いきなりホルムズ海峡が登場する。「ホルムズ海峡におけるイランの動向に鑑み、封鎖の意図が明らかとなった際には、日本は単独で海上自衛隊の掃海艇を派遣し、当該海峡の通航の安全を確保する」というのだ。この指摘で、私は安倍内閣が周辺事態法を改革して、自衛隊の活動範囲を地球の裏側にまで伸ばしたこと、そして安倍首相が繰り返しホルムズ海峡の機雷撤去に言及していることが理解できた。「アーミテージ・ナイ・レポート」がそれを強く求めているのである。
さらに、このレポートでは「武器輸出3原則」の緩和、そして集団的自衛権行使の容認の必要性を強調している。こうして見ると、安保関連法案は、「アーミテージ・ナイ・レポート」と見事なほど重なっているのがわかる。あるいは、こうしたかたちになるのが同盟関係というのかもしれないが。