“問 そこそこの職人でも作れるように、建築の各工程で標準化を進めようとしていると言いたいのでしょう。
答 そうや。腹立つで。もちろん、言いたい意味は分かるよ。建設業界もできるだけ工業化し、効率化していかなければならないというのはその通りや。それは目指したらいい。 それでもな、あんた、その道50年の天ぷら屋の親父と同じ材料で、同じの揚げて食べてみ。どっちがうまいか、そんなのアホでも分かる。建築も同じや。絨毯一つ、壁のクロス一つ張るにも職人の業がある。伸びシロを無視してぴしっと張れば、時間の経過とともに浮いてくるやろ。糊の伸ばし方一つ取っても全然違う。
大阪には安くてうまい物はたくさんあるけど、安うていい物はない。勘違いしたらアカンで。安うてうまい物はある。味でごまかせるからな。でも、体にいいか悪いかは別や。わしの言うてる意味、分かるか?
問 分かります。
答 ペンキ塗りにしても、3回塗りのところをさぼって2回にしても分からへん。これは手抜きと違うで。単価が安かったら、そうしなけりゃ合わへん。せやから、ワシは言うてんねん。品質でも安うてええもんはない。ええもんは高いんや。
問 なるほど。
答 その代わり、ええもんを安く買うことはできる。それは、いい買い物。できたもんを値切ればいいんや。造る前に値切ったらあかんぞ。食べ物はうまくないとその場で分かるけど、建築物は結果が出るまでに時間がかかる。いずれ、品質の問題は出てくるで”