“ 半年して、定期人事異動で課長が交替したある夜、自分の作った書類を死に物狂いでチェックしている僕に新しい課長が声をかけました。「前から不思議やったんやけど、なんでそんな何度も同じ書類をチェックすんの?そげなこつで残業してから、あんたの時間も残業代ももったいないやん」 「ミスが多いので、チェックを何度もしないといかんのです」と答えると、呆れたように、 「そげえ何度も何度もなめるようにチェックしたってんが、直すんのはせいぜい誤字脱字やろ。無駄無駄。数字だけおうちょるか見とりゃいいんよ」と笑います。 ま

半年して、定期人事異動で課長が交替したある夜、自分の作った書類を死に物狂いでチェックしている僕に新しい課長が声をかけました。「前から不思議やったんやけど、なんでそんな何度も同じ書類をチェックすんの?そげなこつで残業してから、あんたの時間も残業代ももったいないやん」
「ミスが多いので、チェックを何度もしないといかんのです」と答えると、呆れたように、
「そげえ何度も何度もなめるようにチェックしたってんが、直すんのはせいぜい誤字脱字やろ。無駄無駄。数字だけおうちょるか見とりゃいいんよ」と笑います。
まさに僕がずーっと怒られ続けていたのがその誤字脱字だったので、「いや、誤字脱字もミスですから」と言うと、また笑って、「そげな間違い誰でんするわあ。ワシかてするわあ。それを無くそうとか思ったら、余計に緊張して結局間違ゆんで。お役所に出す書類やないんやけん、見たい数字だけ間違えんかったら、あとはどげでんいいんや。もう帰り帰り」と。
「・・・」
「yellowbellちゃんよお、仕事は不思議やなあ。嫌やあワシこん仕事すんの嫌やあと思うと、失敗すんのよ。なしやろなあ。ワシにも憶えがあるわあ」
そして、
「あんな、自分でリカバリーできるミスはミスやないけん。ミスしたらいかんミスしたら誰か他んシの世話になって謝らんといけんと思ったら、仕事が嫌になるけん。人間、ミスは無くそうと思って無くせんので。でも、リカバリーの仕方はなんぼでん憶えられるわな。あんたがリカバリーできる仕事を増やせば、あんたはミスしてもいちいちワシんとこに来んで済むやろ。つまり、あんたのミスはそんだけ少なくなるっちゅーことやけんな」と。
で、てっきり怒られると思ってたボンクラな僕はと言えば、「ああ、これが、仕事をおぼえるということなのか」と、強く強く納得したものです。