民間エコノミストの間に衝撃が走っている。大メディアはほとんど取り上げなかったが、今月3日に厚労省が公表した「毎月勤労統計」(1月分確報)にショッキングな数値があった。
「本来なら3月31日に発表される統計でしたが、精査が必要な部分があったらしく、公表は延期されていました。何かあるな……と思ってはいましたが、まさかこれほどヒドイ結果が出るとは予想もしていませんでしたよ」(大手シンクタンク関係者)
サラリーマンには見逃せない重要な数値が下方修正されたのだ。2014年の所定内給与(基本給)で、3月3日の速報段階では前年比0.0%(月額24万1338円)と横ばいだったが、確報ではマイナス0.4%に変わった。要するに、14年の基本給は、13年より減ったことが判明したのだ。
「去年の賃上げムードは何だったのかということです。政府主導の官製春闘で、大企業は給与アップに動いた。ところが企業全体では、基本給は下がっていたのです。サラリーマンの7割が勤務する中小企業は、消費税増税や円安インフレの影響をモロに受け、賃下げするしかなかったことになります」(銀行系シンクタンク関係者)
■実質賃金も22カ月連続マイナスに
毎月、勤労統計はおよそ3年ごとに調査対象の事業所を入れ替える。その影響を加味し、厚労省は過去にさかのぼって数値(指数)を変更する。今回はそのタイミングだったため、数値が大幅に変更されたが、政府の期待とは裏腹に下方修正ラッシュとなったのだ。
残業代を含む給与は0.3%増から0.1%減とプラスからマイナスに転落し、ボーナスを入れた給与総額は0.8%増から0.4%増に下方修正。実質賃金は20カ月連続マイナスから、22カ月連続マイナスとなった。
「安倍政権は、大企業の賃上げが消費を刺激し、その恩恵は中小企業にも波及すると主張していました。しかし、統計を見る限り、中小企業への波及効果は全くなかったことになります。今年1月以降、サラリーマンの基本給は増加に転じていますが、これも怪しい。いずれ下方修正されるのではないかと疑ってしまいます」(某シンクタンク主任)
政府主導の賃上げなど、しょせん、まやかし。それが政府のデータでも証明された。
2015年4月9日 日刊ゲンダイ