“祖父いわく、「あの戦争を引き起こしたのは『会社』だ」と言うんだよ。軍閥でも国家主義者でも革新官僚でもなく、「会社」が戦争の原因をつくったのだと。 祖父は大正のほとんど終わりに生まれた人だったが、少年時代まで身近にある仕事といえば、第一産業か「あきんど」レベルの商家しかなかったと。しかしそれが10代に入るころから「会社」というものが現れ、「サラリーマン」なるものが出現したと。これによる世の変化には凄いものがあったらしい。 そして祖父の実感として、その「会社」なる新しい経済的存在は、「戦争をすればするほど

“祖父いわく、「あの戦争を引き起こしたのは『会社』だ」と言うんだよ。軍閥でも国家主義者でも革新官僚でもなく、「会社」が戦争の原因をつくったのだと。
祖父は大正のほとんど終わりに生まれた人だったが、少年時代まで身近にある仕事といえば、第一産業か「あきんど」レベルの商家しかなかったと。しかしそれが10代に入るころから「会社」というものが現れ、「サラリーマン」なるものが出現したと。これによる世の変化には凄いものがあったらしい。
そして祖父の実感として、その「会社」なる新しい経済的存在は、「戦争をすればするほど儲かる仕組みになっていた」ということだった。それでどんどん「会社」が増えていく中で「会社」は国家に戦争を要求し、それで対米戦にまでなだれ込んだと、それが祖父の「史観」なんだな。
祖父の語る「開戦原因」には、本当に軍閥も国家主義者も革新官僚も日独伊三国同盟も出てこない。「会社」こそが昭和一桁ごろに日本社会を劇的に変化させ、戦争を希求した存在だったと言うわけ。
そして一般的な「歴史」では、日本は昭和20年の敗戦によって姿を大きく変えたとされているが、祖父は全然それは違うと言う。昭和極初期に「会社」「サラリーマン」が登場した時が最も日本が変わった瞬間であり、GHQによる改革もその延長線上に過ぎず、敗戦による大きな変化はなかったと言うんだ。
繰り返すが、祖父は軍隊にはいたが「戦闘」はほとんど経験したことがない人で、ある意味当時の日本人の中で一番安閑と暮らすことができた人である。死地を見たこもなく、米軍の強大さに圧倒されたこともない。満州で穏やかに暮らしていて、気付いたら戦争が終わっていたという、非常に幸せな人である。”
祖父の語るところによると
資本主義の本質をついた指摘。大量生産で在庫を抱え、市場が飽和していたら唯一の打開策は破壊。それも国家的規模の。