宮廷社会では男も女も隠れて不義密通をしているばかり、
これでは誰が「もののけ」に祟られようと地獄に堕ちようと仕方がない。
その点では儒教も仏教も無力である。
そして「いろごのみ」を廃してしまえば
平安貴族の存在価値そのものが無くなってしまう
中国伝来の倫理規範としては不義密通はよくないことと理解はしているものの
現実の生活では「もののあはれ」を感じ「いろごのみ」の行動をしてしまうことはやめられない
やめられないことについては心の痛みもある
実際に不義密通の子が生まれて、ややこしいことになると、
時間を経過するごとに罪を感じるのではあるが
その罪の感覚は、今日また行う不義密通の抑止にはならないらしい
それはそれ、これはこれである
源氏物語では「もののあはれ」はよいことなのであり「いろごのみ」はよいことなのである
たたりがあったり怨霊、悪霊の問題もあるのだが、だからといって、
すぐに出家して何か解決するものでもない
そんなものは中国の解決方法なのであって
平安貴族の生活感覚にはぴったりしない
平安貴族が恋愛人間であることを信条としているからには
不義密通は避けられないし
中国伝来の倫理とは一致しないものである
たくさん妊娠してたくさん出産することが大事に決まっているだろう
近親婚による生む力の衰退もあり
かといって農民階級との力の差も歴然としていて
貴族階級を維持するためだけにも
妊娠活動はやめられなかったはずである
しかしまたいろごのみの内容としては少女漫画的であって
そこにはなにかオフィシャルなものとしての力が働いていたものであろう
人間が考えそうなのは
もっとくだらない因果関係であるが、そんなことは源氏物語では問題にしていない
そのあたりは知的に高いと思われる
季節が替わってもののあはれであるが
そのとき同時にいろごのみであり行為に及んでいるという仕組みである
それを下品と思わず
高貴であると規定しているところがおもしろい