夫婦のコミュニケーションとコーピングを強化するためのDVD
A DVD to Strengthen Couples' Communication and Coping
DVDを利用した5週間のプログラムを終了した夫婦ではコミュニケーションとコーピングが高まり、改善の報告は主に女性にみられた。
離婚は数多くの有害な結果をもたらすため、夫婦のコミュニケーションとコーピングの質の改善を目指した取組みは臨床的・公衆衛生的な視点から重要である。従来の夫婦関係強化プログラム(marriage enhancement program)ではワークショップや多様な種類のカウンセリングが採用され、そして最近は双方向的なウェブやDVDを利用した教育フォーマットが試みられている。本論文の著者Bodenmannらはスイスにおいて、広告を通じて募集・登録した、診療対象とはなっていない夫婦330組を対象にこのような予防プログラムの無作為化対照試験を実施した。
治療群はDVD単独群、DVDにテクニカルサポート(電話をかけてチャプターの進捗状況を尋ね、催促、動機づけを行う)を追加するDVD-T群、もしくは待機リスト(対照)群であった。このプログラムは著者の1人が開発したもので、内容はストレス、夫婦各自のコーピング、夫婦の双方的なコーピング、コミュニケーション、夫婦間の衝突・葛藤の処理、そして問題解決に焦点化した1回90分間、週5回のセッションで構成された。
脱落率は両DVD群ともに高かった(25%)。全体的にDVDプログラム終了者では待機リスト群の参加者に比べ良好な治療成績が得られた。男性はDVDの使用傾向が高いから効果も高いだろうという想定に反して、女性のほうが男性に比べ効果が高く、女性の自己評価による夫婦双方的なコーピング、建設的なコミュニケーション、衝突・葛藤の処理に関する効果量の平均は「低」~「中」の範囲であった。DVD-T群では(テクニカルサポート追加による)上乗せ効果はほとんどみられなかった。女性においては、セッション1回あたりに費やした時間が10分間増加すると、3、6ヵ月後でも有益な効果が増大した。最初の評価スコアが平均よりも標準偏差(SD)の1/2以上低い人がもっとも大きな利益を享受し、種々の指標でスコアが平均以上となる人の割合が10%から16%へと改善した。
コメント
陽性プラセボ群を用いれば、今回の介入において効果が高い要素を特定するのに役立つ可能性があり、フォーマットの修正や提供システム、多忙な夫婦向けには施行回数や時間の調整を検討すれば、利便性が改善するかもしれない。ストレスが強く診療を要するような夫婦に対してもこのようなプログラムが有益かどうかは不明なままだが、プログラムは費用がそれほどかからず実施しやすいことを考慮すると、エビデンスに基づく試験の終了を待たずに、補助的治療としてこれらの使用を検討したいと考える臨床医がいるかもしれない。
—Joel Yager, MD
引用文献:
Bodenmann G et al. Enhancement of couples' communication and dyadic coping by a self-directed approach: A randomized controlled trial.
J Consult Clin Psychol 2014 Mar 24; [e-pub ahead of print].
NEJM Journal Watch PSYCHIATRY