子どもへの向精神薬処方について、9年間の変化を調査
医療経済研究機構は1月13日、子どもへの向精神薬処方の経年変化に関する研究結果を発表した。抗精神病薬と抗うつ薬が増加傾向にあり、治験の推進が課題となることが分かったという。この研究は、同研究機構の奥村泰之研究員らが行ったもので、2014年11月25日の「精神神経学雑誌」に掲載された。
子どもへの向精神薬の処方件数は、世界中で増加している。日本における未成年の精神疾患による受診者数は、2002年は95,000人だったが、2008年には148,000人まで増加。向精神薬を処方される子どもの数も増加していると予想される。
しかし、日本国内において承認されている向精神薬のうち、子どもを対象にしたプラセボ対照無作為化比較試験を経たものは、注意欠如・多動性障害(ADHD) 治療薬である、「アトモキセチン」と「徐放性メチルフェニデート」の2剤のみ。そのため、子どもへの投与に関する有効性や安全性が確立していない向精神薬を、やむを得ず使用していることが考えられる。こうした現状のなか、実際、子どもへ向精神薬(ADHD治療薬、抗精神病薬、抗うつ薬、抗不安・睡眠薬など)がどの程度使用されてきているのかについては、これまで報告がなかった。
抗精神病薬と抗うつ薬の増加傾向、治験の推進が課題
今回の研究では、厚生労働省が実施した2002〜2010年の社会医療診療行為別調査(毎年6月審査分の全国のレセプトを無作為抽出)のデータを二次分析。18歳以下の外来患者、延べ233,399件を分析対象としたという。
2008〜2010年の患者と2002〜2004年の患者と比較した結果、6~12歳ではADHD治療薬は84%増、抗精神病薬は58%増と、増加傾向が認められた。13~18歳では、ADHD治療薬は2.5倍増、抗精神病薬は43%増、抗うつ薬は37%増と、こちらも増加傾向が認められた。この結果により、子どもを対象とした治験が実施されているADHD治療薬だけではなく、抗精神病薬と抗うつ薬の処方割合も増加していることが判明。子どもへの治験の推進が課題と考えられる。
さらに、抗精神病薬を処方された13~18歳の患者のうち、53%は抗不安・睡眠薬、26%は抗うつ薬が併用されていることが判明。また、抗うつ薬を処方された患者のうち、58%は抗不安・睡眠薬、36%は抗精神病薬が併用されていた。アメリカ、ドイツ、オランダで実施された、子どもへの向精神薬間の併用割合は6〜19%と報告されており、日本では併用割合が高くなる理由を検討していく必要があるという。
こうした併用処方の有効性と安全性に関するエビデンスは諸外国においても不足しており、実臨床において、併用処方による長期的な有効性と安全性を把握できるような調査手法を検討することが課題となる。