ADHD治療薬アトモキセチンは自殺関連事象のリスクを上昇させるのか? Increased Risk for Suicidal Events with Atomoxetine for ADHD? うつ病や物質乱用の併存がない患者では同リスクは大幅に減弱していた。 アトモキセチンは注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害(ADHD)の治療に用いるノルアドレナリントランスポーター遮断薬であり、メタアナリシスにおいて自殺念慮と関連することが報告されている(J Am Acad Child Adolesc Psyc

ADHD治療薬アトモキセチンは自殺関連事象のリスクを上昇させるのか?
Increased Risk for Suicidal Events with Atomoxetine for ADHD?
うつ病や物質乱用の併存がない患者では同リスクは大幅に減弱していた。
アトモキセチンは注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害(ADHD)の治療に用いるノルアドレナリントランスポーター遮断薬であり、メタアナリシスにおいて自殺念慮と関連することが報告されている(J Am Acad Child Adolesc Psychiatry 2008; 47:209)。米国食品医薬品局(FDA)はこのリスクについて本剤の黒枠警告(black-box warning)に記載するよう命じた。ADHD治療薬と自殺完遂・企図の関連をさらに検証するため、Chenらはスウェーデンの国民登録から、1960~96年の出生者でADHD診断を有する37,936例に関するデータを入手し、検討した。
集団レベルおよび患者内で治療期間と非治療期間を比較する解析が行われ、対象集団は10~24歳群と24~46歳群の2つの群に分けられた。集団レベルでは、ADHD治療に関連して自殺関連事象のリスクが上昇した。サブグループ解析において、このリスク上昇はアトモキセチンのみと関連していた。自殺行動があった患者のおよそ50%がうつ病を併存していた。併存する気分障害・物質関連障害を除外すると、集団レベルにおける関連の有意性が大幅に低下した。患者内解析では、自殺傾向に関して薬物療法に関連した増大は検出されず、予想に反して、中枢刺激薬は保護的に働く可能性が示された。感度解析において、抗うつ薬の処方による影響は認められなかった。
コメント
この包括的な研究における最年少集団の年齢は10~24歳であるため、残念ながら、7歳児と12歳児が対象であった初期のメタアナリシスの結果と今回の研究結果を比較することはできない。
この研究ではうつ病の併存率が高かったこと、そして併存する精神疾患で補正すると集団レベルにおけるADHD治療薬の影響が減弱したことから、臨床医はADHD治療薬を処方する前に総合的な精神医学的評価を実施すべきである。さらに、最近の研究によると、ADHD家系では自殺行動のリスクが上昇しているという(JAMA Psychiatry online 2014 Jun 25)。自殺念慮・行動を自発的に訴えることがない小児には、これらについて問診することがとくに肝要である(NEJM JW Psychiatry Mar 23 2009)。
—Barbara Geller, MD
引用文献:
Chen Q et al. Drug treatment for attention-deficit/hyperactivity disorder and suicidal behavior: Register based study. 
BMJ 2014 Jun 18; 348:g3769.