自閉症の胎生起源はホルモン性かもしれない
A Fetal Origin of Autism May Be Hormonal
バンク保存の羊水穿刺検体において早期のステロイド誘発性活性が見つかる。
乳児における自閉症行動を示す臨床研究の報告(NEJM JW Psychiatry Nov 13 2013)を受けて、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)の胎生起源の探索に向けた気運が高まっている。本論文の著者Baron-Cohenらは、Danish Historic Birth Cohortにおいて1993~99年に出生した19,677例すべてから採取・保存された羊水を用いて、コルチゾールとΔ4性ステロイド経路における4種類のホルモン(プロゲステロン、17α-ヒドロキシ-プロゲステロン、アンドロステンジオン、テストステロン)を解析した。研究者らはデンマークの全国精神科データベースを用いて、ASD症例と通常発達の対照者とのマッチングを行った。
サンプル全体におけるASDの有病率(0.8%)はデンマーク国民全体での有病率とほぼ同等であった。女性では自閉症が少なく、女性のASD症例では対照群に比べ父親の年齢が有意に高かったため、解析では男性のみが対象とされた(最終対象集団:男性ASD症例 128例、対照 217例)。ASD群では5種類のホルモンの平均値が有意に高かった。主成分分析において、すべてのホルモンがバリアンスの49%を占める要因に負荷された。
コメント
これらの知見は自閉症の胎生起源を支持するものであり、胎生期における神経発達に関与する遺伝子の有意に高い発現(Am J Psychiatry 2014 May 30)および胎生期の異常な皮質発達(NEJM JW Psychiatry Mar 26 2014)を示すASD研究と一致する。胎生期のホルモンにはエピジェネティクな作用があり、これが異常なメッセンジャーRNA発現に関与している可能性がある。ステロイド平均値が高いことの考えられる理由の1つは外因性内分泌攪乱物質への曝露であり、これらの物質は食品、化粧品、その他の材料に広く含まれている。たとえば、内分泌攪乱物質として知られるフタル酸はASDと関連している(ASN Neuro 2012; 4:e00089)。特定の病因が判明するまでは、臨床医は妊娠可能年齢の女性、とくに妊婦の患者に対して内分泌攪乱物質への曝露を避けるように促す必要がある。