三島由紀夫は愛国心について「正直キモいよね。だいたい『愛』が国境線の内側だけで終わってる時点で『愛』なわけないじゃん」と述べている。
・三島由紀夫「愛国心-官製のいやなことば」1968年
…「愛国心」という言葉は官製のものであり、筋が通らない。
『この言葉には官製のにほひがする。また、言葉としての由緒ややさしさがない。どことなく押しつけがましい。反感を買うのももっともだと思われるものが、その底に揺曵してゐる…愛国心の《愛》の字が私はきらひである。自分がのがれやうもなく国の内部にゐて、国の一員であるにもかかはらず、その国といふものを向こう側に対象に置いて、わざわざそれを愛するといふのが、わざとらしくてきらひである…日本人の情緒的表現の最高のものは《恋》であって《愛》ではない。もしキリスト教的な愛であるなら、その愛は無限定無条件でなければならない。従って、《人類愛》というなら多少筋が通るが、《愛国心》というのは筋が通らない。なぜなら愛国心とは、国境を以て閉ざされた愛だからである』