世界の高校生らが知識と応用力を競う「国際科学五輪」で、日本の高校生のメダルラッシュが続いている。
今年は数学と生物学ですでに計10個(金5、銀4、銅1)のメダルを獲得。そんなティーン世代の素顔をのぞいてみると――。
メダリストたちは、いずれも強い好奇心の持ち主だ。生物学で銀メダルの筑波大付属駒場高(東京都)2年、今野直輝さんは、小学生の時から「毒をもつのが格好いい」と蛇などの生き物が大好きで、「顕微鏡をのぞけば、こんなにたくさんの生物がいることに驚き、世界が変わる」と話す。
精神科医を目指しているという、銀メダルの広島学院高(広島県)3年、蔵田展洋さんは「一番複雑なのは人間の思考や感情。一人ひとりと向き合いながら、物質や寿命では計れない精神の幸せを追求したい」と語る。
世界の強豪たちが相手となるだけに、周到な準備も欠かさない。今年度の数学五輪は参加国・地域が100を超え、参加者も560人の激戦で金メダルを獲得した早稲田高(東京都)3年、上苙うえおろ隆宏さんは、「昨年は銀だったので、2月からずっと準備してきた」と笑顔をみせた。
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A 問題は高度かつ多彩で、知識だけでは太刀打ちできない。数学は筆記試験のみだが、4時間30分以内に3問を解く試験を2日間行う。化学は課題に対して実験計画を立て、実験で得た結果を基に問題に答える5時間の試験と、5時間の筆記試験を2日間で行う。
Q 日本のメダルラッシュが続いている理由は。
A 国際大会の参加者の約半数はメダリストになるが、日本代表は上位の常連。文部科学省は国際科学五輪を「日本の科学技術を支える人材育成に役立つ大会」(人材政策課)と位置づけており、年間約2億円の予算で手厚く支援している。
優秀な人材を確保したい大学も注目する。科学技術振興機構の2013年末の集計では、科学五輪や国内大会で好成績を上げた生徒に対し、早大、慶大など26大学が入試で特別枠を設けている。
Q 代表選手の選考は。
A 代表を選ぶ登竜門が国内大会。参加者は年々増えて激戦状態だ。数学は昨年度は5000人を突破、7大会全体では1万6000人を超えた。大半が高校生だが、中学生で挑戦する猛者もいる。国内大会の運営は、関係学会や公益財団など分野ごとに違うが、支えているのは大学や高校の教員だ。国際大会では問題を事前に日本語に翻訳するなど、科学五輪大会を支える重要なスタッフにもなる。