海外の追跡研究では、地中海式食事法がアルツハイマー病のリスクを減少させるという報告がみられ、乳製品の摂取は控えめがよいとされている。しかし、久山町研究では、大豆・豆製品および牛乳・乳製品の摂取量が多い食事パターンと認知症予防との関連が報告されている。このうち、牛乳・乳製品の認知症予防に対する効果を検討するため、九州大学の小澤 未央氏らは、高齢の日本人集団での認知症発症における牛乳・乳製品の摂取の効果を検討した。その結果、牛乳や乳製品の摂取量が多いほど、認知症とくにアルツハイマー病のリスクが低下することが認められた。Journal of the American Geriatrics Society誌オンライン版6月10日号掲載。
本研究は、日本人高齢者における認知症全体およびそのサブタイプの発症に牛乳や乳製品の摂取が効果的かを調べることを目的とした、前向きコホート研究である。対象は、久山町住民で60歳以上の非認知症者(n=1,081)。牛乳と乳製品摂取量は、70項目の半定量食物摂取頻度調査票を用いて調査し、四分位にグループ化した。牛乳と乳製品摂取量による認知症全体、アルツハイマー病(AD)、血管性認知症(VaD)の発症リスクは、Cox比例ハザードモデルを用いて算出した。
主な結果は以下のとおり。
・17年以上の追跡期間において、303例が何らかの認知症を発症した。うち166例がAD、98例がVaDであった。
・年齢・性別で調整した発症率は、認知症全体、AD、VaDともに、牛乳と乳製品の摂取量の増加に伴い、有意に低下していた(傾向性p:それぞれp=0.03、p=0.04、p=0.01)。
・潜在的な交絡因子を調整したところ、AD発症と牛乳や乳製品摂取量との間には有意な直線関係が得られた(傾向性p=0.03)。一方で、認知症全体とVaDでは有意ではなかった。
・ADの発症リスクは、牛乳や乳製品摂取量の第1四分位よりも第2、3、4分位において有意に低かった。