内科で発見されるうつ

参考に採録

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 私は内科医ですが、外来診療の現場では、ちょっとした抑うつの方から、重いうつの方に遭遇することが少なくありません。

 実は、うつ病を呈する患者の初診診療科は、6~7割が内科。最初から精神科や心療内科を受診するのは1割にも満たないという調査報告があります。それは、うつには頭痛や動機、息切れなど身体症状が前面に出ることが多いからです。
 私たち医師は、「除外診断」といいますが、必要な検査をして体の病気が当てはまらない時に心の病を考え、改めて生活環境やストレス、睡眠の状況などの質問をすると、うつ病による身体症状であることがわかるケースがしばしばあるのです。
 逆に体の病気をきっかけにうつになることもあります。糖尿病、心筋梗塞、脳血管障害などです。最近は、初老期や老年期のうつも多くなっていると感じていますが、認知症との鑑別が困難な方もいます。
 そういう私も、比較的自身の体調に鈍感な方ですが、気分が晴れずにいつもの意欲が上がらないことがあり、“抑うつ気味かな”と思うことがあります。今の世の中、抑うつ気分を味わったことがない人のほうがまれではないでしょうか。
 うつは一般的におよそ15人に1人が生涯のうちに1度はかかると言われています。比較的軽い「うつ状態」を含めると、もっと多いでしょう。
 「心の風邪」と言われるほど、うつはポピュラーな病気です。風邪が一定期間の養生で治るように、うつは必ず良くなります。 
 うつに理解がない人たちの中には、うつを怠けものの病気と言い、ならない人は強い、という風潮があるように見受けられますが、私はそうは思いません。
 うつは、責任感があり一生懸命に生きている方たちに多い、心の不調です。無理をしていると体が疲れるのと一緒です。
 うつで悩まれている方に私は「怠け者はならない病気、あなたが一生懸命生きている証拠。名誉の負傷だ。自分を責める必要は全くありません。心のエネルギー不足だから今は思いっきりふゆーする(怠ける)時」と話します。
 プチうつを時々感じる私も、鏡をみて“お前は一生懸命生きているんだな”と自画自賛。そして、心のスイッチをオフに。