むち打ち症関連疾患は公衆衛生上の大きな問題の一つで、慢性化した患者に対するエビデンスに立脚した治療法はない。慢性患者を登録して、理学療法士(PT)が行う運動療法、または簡単なアドバイスに割り付け、疼痛軽減効果を比較したランダム化比較試験(RCT)の結果、両群の転帰に有意差がないことが示された。オーストラリアSydney大のZoe A Michaleff氏らが、Lancet誌電子版に2014年4月4日に報告した。  むち打ち症関連疾患の予後を分析した系統的なレビューでは、半数以上の患者で症状は6カ月を超え

むち打ち症関連疾患は公衆衛生上の大きな問題の一つで、慢性化した患者に対するエビデンスに立脚した治療法はない。慢性患者を登録して、理学療法士(PT)が行う運動療法、または簡単なアドバイスに割り付け、疼痛軽減効果を比較したランダム化比較試験(RCT)の結果、両群の転帰に有意差がないことが示された。オーストラリアSydney大のZoe A Michaleff氏らが、Lancet誌電子版に2014年4月4日に報告した。
 むち打ち症関連疾患の予後を分析した系統的なレビューでは、半数以上の患者で症状は6カ月を超えて持続し、最大30%の患者が中等症から重症の疼痛と障害を抱えていることが示されている。慢性化した患者には様々な治療が実施されているが、それらの有効性を評価したRCTはほとんどない。
 急性のむち打ち症関連疾患を対象とした試験では、短期間の理学療法プログラムが、総合的な理学療法プログラムと同様に有効であることが示唆されていたが、慢性化した患者にも同様に効果が期待できるかどうかは明らかではない。
 著者らは、慢性のむち打ち症関連疾患の患者を対象に、理学療法士が提供する総合的な運動療法プログラムの有効性をアドバイスのみと比較する、実際的なRCT ROMISEをオーストラリアで実施した。
 2009年9月21日から2012年2月27日に患者登録を実施。発症から3カ月超で5年未満のグレード1または2の慢性むち打ち症関連疾患患者で、中等度以上の疼痛と、痛みによる中等度以上の活動制限があり、薬物療法以外の治療を受けていない、18~65歳の人々を登録。総合的な運動療法プログラムを20セッション(並行して認知行動療法も実施)する介入群と、アドバイス(1回のセッションを行い、患者が求めた場合には電話サポートも実施)のみを実施する対照群に、ランダムに割り付けた。全員に教育用ブックレット(病気の説明と症状管理のためのアドバイス、簡単な運動療法を解説)を提供した。
 主要評価項目は、過去1週間の疼痛強度に設定し、ベースライン、14週後、6カ月後、12カ月後に盲検化された評価者が、スコア0(疼痛なし)~10(最も深刻)で評価した。分析は線形混合モデルを用いて、intention-to-treatで行った。
 172人を登録し、86人を介入群に、86人を対照群に割り付けて、2013年2月27日まで追跡した。
 14週後まで追跡できたのは157人(91%)、6カ月後まで追跡できたのは145人(84%)、12カ月後まで追跡できたのは150人(87%)だった。
 主要評価項目に設定された疼痛スコアに有意差は見られなかった。各評価時点の疼痛スコアのベースラインからの変化を両群間で比較したところ、14週時の差は0.0(95%信頼区間 -0.7から0.7)、6カ月時の差は0.2(-0.5から1.0)、12カ月時の差は-0.1(-0.8から0.6)だった。全ての評価で差は有意ではなく、臨床的に意義のあるレベル(2.0)にも及ばなかった。
 副次的評価項目についても、ほとんどが有意差を示さなかった。例外は、自己申告による回復のスコアで、試験期間を通して介入群で対照群よりも有意な改善が見られたが、臨床的に意義のあるレベルではなかった。また、機能スコアも14週時のみ対照群よりも介入群で有意に改善していたが、臨床的に意義のあるレベルの差ではなかった。
 治療効果に影響を及ぼす可能性のある変数(神経因性疼痛、心的外傷後ストレス障害の症状、むち打ち症関連症状の持続期間など)について、14週時の疼痛強度に対する影響を調べたが、有意な交互作用は認められなかった。
 重篤な有害事象の報告はなかった。有害事象は介入群の5人と対照群の4人に発生したが、脱落した患者はいなかった。
 強力で総合的な運動療法とシンプルなアドバイスの効果は同様だった。「急性から慢性のむち打ち症関連疾患に対する有効な治療を早急に開発する必要がある。そのためには、持続する疼痛と障害の機序を明らかにし、治療薬の有効性と投与のタイミングを研究し、患者に提供すべき教育とアドバイスの内容、その伝え方に関する検討を進める必要があるだろう」と著者らは述べている。
 原題は「Comprehensive physiotherapy exercise programme or advice for chronic whiplash (PROMISE): a pragmatic randomised controlled trial」、概要は、Lancet誌のWebサイトで閲覧できる。