非境界性パーソナリティ障害に対する心理療法 Psychotherapies for Non-Borderline Personality Disorders 非境界性パーソナリティ障害患者において、スキーマ療法の治療成績は非指示的明確化療法および通常治療よりも優れていた。 境界性パーソナリティ障害以外、心理療法の対象として厳密な臨床試験により検討されたパーソナリティ障害は少ない。オランダのBamelisらは今回の研究において、回避性、依存性、強迫性、演技性、自己愛性、または妄想性パーソナリティ障害と診

非境界性パーソナリティ障害に対する心理療法
Psychotherapies for Non-Borderline Personality Disorders
非境界性パーソナリティ障害患者において、スキーマ療法の治療成績は非指示的明確化療法および通常治療よりも優れていた。
境界性パーソナリティ障害以外、心理療法の対象として厳密な臨床試験により検討されたパーソナリティ障害は少ない。オランダのBamelisらは今回の研究において、回避性、依存性、強迫性、演技性、自己愛性、または妄想性パーソナリティ障害と診断された患者323例を特定し、スキーマ療法(schema therapy)群(147例)、Rogerian理論に基づく明確化(clarification)に焦点を当てた心理療法群(41例;実施できたのは9施設中3施設のみ)、もしくは通常治療(TAU)群(135例)に無作為に割り付けた。スキーマ療法は認知的、教育的、体験的、行動的、対人的な技法を組み合わせ、変動する自我状態に焦点を当て、幼児期のネガティブな体験を処理する方法である。明確化に焦点を当てた心理療法との共通点はあるが、治療用マニュアルやトレーニング教材で述べられているように、明らかな違いが存在する。
36ヵ月間に参加者が受けたセッションの平均回数は、スキーム療法が50回、明確化に焦点を当てた心理療法が51回、通常治療が22回であった。TAU群と比較し、体験的なスキーム療法の訓練を受けた治療者から治療を受けたサブグループでは脱落率が低かった(26% 対 38%)。治療中に40~58%の患者が何らかの薬物療法を受け、その割合がもっとも高かったのはTAU群であった。登録後36ヵ月目の時点で、すべての群で改善し、効果量は「大」であった。およそ50~80%の患者が“回復(recovery)”のレベルにまで改善した。スキーマ療法群ではもっとも高い回復率が得られ、面接に基づく評価のほとんどの項目でスキーマ療法の成績は明確化に焦点を当てた心理療法ならびにTUAに勝っていた。しかしながら、自己報告に基づく患者評価に関しては3群間に有意差は認められなかった。
コメント
他の要因のうち、個々のパーソナリティ障害の種類、治療者—患者相互作用、併存疾患、あるいは関連する治療による層別解析は、サブグループの人数が少なく、実施できなかった。さらに、本研究では未治療対照群が置かれなかった。両方の心理療法(いずれもセッション回数がTAUよりも2倍多かった)はTAUに比べ治療成績が優れており、この結果は、これらの非境界性パーソナリティ障害に対してスキーマ療法の戦略と手段の優位性を支持するものと言えよう。さらに、いずれの治療法によっても患者の症状を改善したことは、励みとなる結果である。
—Joel Yager, MD
引用文献:
Bamelis LLM et al. Results of a multicenter randomized controlled trial of the clinical effectiveness of schema therapy for personality disorders. 
Am J Psychiatry 2013 Dec 10; [e-pub ahead of print].