最近はコミュニケーション障害という言葉がインフレーション気味で、
なんでもかんでもコミュニケーション障害としてしまっている場合がある
人間の場合、孤独でいる時以外は、コミュニケーション場面になるので、
どんな原因であれ、人との接触で問題がある場合、コミュニケーション障害と一括してしまう場合もあり、
それはそれでいいと思う
耳が聞こえなくても、発語が不自由でもコミュニケーション障害には違いない
しかしもっと限定したコミュニケーション障害というものがあるので
それを考えたい
だいたい人間同士であれば、細かく話し合えば、かなり分かり合える場合が多いものだ
生育の背景や教養の分野が違ったとしても、かなり分かり合える
それは、相手の頭のなかを推定できるからだ
自分は理系だからこんなことはわかるけれども、相手は文系だから、常識ではないだろうというように
相手のことを推定することができる
相手の頭の中身を推定しながら会話が進行する
だからコミュニケーションが円滑に進む
細かく話しあってもわからないのは
たとえば知能発達遅滞、妄想症、認知症などがある
これは理性に障害があるために、相手のことを理解することが出来ない
自分の世界はわかるけれども、相手の世界を理解することができない
「いま仮に、あなたが相手の立場にたったとして、どんな風に思うだろうか」ということが
考えられない
昔はそれくらいでおしまいで、特にコミュニケーション障害などと問題にすることはなかった
現在はそれが問題になっている
コミュニケーション障害とは何かと同時に
なぜ今問題にされているのかが問題だと思う
人間のコミュニケーションは、常識の範囲からの変化を伝えることで成立することも多い
すでに常識ならば、事さらに繰り返して伝える必要はないはずだろう
今回は常識のままで考えたらダメだよ、ここを気をつけてねというのが
だいたいのコミュニケーションだろう
常識からの差分を伝達する
長い間夫婦をしていると「いつものやつをいつものように」というだけで
ということはほとんど何も言わないで「おい」だけで生活は済んでしまう
いつものとおりではない部分だけを言葉で伝えればいい
相手によっては、
自分の常識と相手の常識は異なることがあり、
その場合は、自分の常識を元にして、常識との差を伝えることだけではうまくいかないことがある
相手の理性に異常がない限り、時間をかけて、細かく説明すれば、分かり合えるだろう
こちらの言いたいことを正確に伝えることもできるだろう
たいてい相手の理性には限界があるので、そこを考慮して、相手の分かる範囲で話した方がいい、無駄にならない
相手の頭のなかに何があるか確認しないままで、
自分の常識と同じようなものだろうと前提して、
差分だけを伝えると、何も伝わらないことがあり、
前提部分から言わないといけない場面がある
それは仕事の中で発生するとなかなかきついので
コミュニケーション障害ではないかという発言になる
注意欠陥障害があって、相手の意図を充分に汲み取れないとか
相手の指示を聞き落とすなどという場合は、当然注意欠陥障害であって
コミュニケーション障害ではない
指示のスピードが早過ぎるとかの場合もコミュニケーション障害とはいえない
不十分な指示であっても常識で補って仕事をするものだが
場合によっては指示が不十分すぎて補いきれない場合もある
その場合は指示を出す側が悪い
ここまで常識という言葉で書いてきたが
正確に言うと、今相手の頭のなかにある理解や感情の総量と、
今自分の頭のなかにある理解や感情の総量と、
その二つの違いを理解できないで、自分の頭のなかにある理解や感情が当然相手の頭のなかにあると前提してしまい、
そのうえで、少ない言葉で伝えようとするものだから、相手としては、かなり補って理解しないといけなくなる
そうこうしているうちに誤解が重なり、感情も通じ合わなくなる
(つまり、サリーちゃん問題を基本に考えている)
職場で時々刻々と事態は変化する
朝の申し合わせで確認したことも、時間とともに変化する
その変化を自分は知っているが相手は知らないという場合、
まずその変化を説明して、そのあとで、対策を伝えなければならない
自体の変化を知らないままで何か説明されても、相手は理解できない
あるいは、なにか変化があって、それを前提として話しているようで、自分は変化を知らないことを相手は知らないのだなと推定したりする
基本情報の共有ができていない
かつ
基本情報の共有ができていないことを意識していない
その場合に
基本情報の共有ができているという前提でコミュニケーションをした場合
コミュニケーション障害になる
空気を読むということと似ているが少し違う
ここでの問題は空気ではなく、相手の頭の中身である
そういうものをコミュニケーション障害と私は考えている
なぜ今問題になっているのか
これはコミュニケーション障害という病気なんだから仕方がない、責めるのはハラスメントだという空気がありそうである
もっと優しくしろと要求している、そして免責しろと要求している