抗うつ薬の血中濃度は種類ごとに、性および年齢の影響を有意に受けている。このことが、ドイツ・ヴュルツブルク大学病院のS. Unterecker氏らによる自然条件下にて評価した治療薬物モニタリング(TDM)の結果、明らかにされた。抗うつ薬のTDMデータの評価は多くの場合、精神疾患の既往や身体的合併症のない均一サンプルを選択して行われており、日常診療では限界を有する可能性があることから、研究グループは自然条件下にての評価を行った。Journal of Neural Transmission誌オンライン版2012年12月20日号の掲載報告。
研究グループは、自然条件下にて抗うつ薬のTDMデータを評価し、すべての臨床的関連を明らかにすることを目的とした。TDM解析はレトロスペクティブの手法にて、2008~2010年の3年間を対象とし、標準的な臨床設定における抗うつ薬の用量補正後血中濃度について、性と年齢の影響を調べた。
主な結果は以下のとおり。
・TDM解析に組み込まれたサンプルおよび数は下記であった。
アミトリプチリンとノルトリプチリン(AMI+NOR)693例
シタロプラム(CIT)160例
クロミプラミンとN-クロミプラミン(CLO+N-CLO)152例
ドキセピンとN-ドキセピン(DOX+N-DOX)272例
エスシタロプラム(ESC)359例
フルオキセチンとN-フルオキセチン(FLU+N-FLU)198例
マプロチリン(MAP)92例
ミルタザピン(MIR)888例
セルトラリン(SER)77例
・女性では、AMI+NOR(32%)、CIT(29%)、DOX+N-DOX(29%)、MIR(20%)の用量補正後血中濃度が有意に高かった。
・60歳超では、AMI+NOR(21%)、CIT(40%)、DOX+N-DOX(48%)、MAP(46%)、MIR(24%)とSER(67%)の用量補正後血中濃度が有意に高かった。
・両方の極値群の比較において、女性60歳超群の用量補正後血中濃度が、男性60歳以下群と比較してAMI+NOR(52%)、CIT(78%)、DOX+N-DOX(86%)、MIR(41%)と顕著に高いことが示された。
・抗うつ薬の血中濃度は種類ごとに、性および年齢の影響を有意に受けており、相加効果を考慮しなければならない。
・TDMは、自然な臨床設定下でも高用量治療による副作用リスクを低下するために推奨される。