"まず宗派対立を収拾し、キリスト教を統一する必要がある。それが『精神現象学』の執筆動機だった。ここでは父と子と聖霊の三位一体という正統派の教義が、さまざまな宗派を超える「弁証法的統一」であることを論証しようとする。
だから「正・反・合」のトリアーデには大した意味がないのだが、彼はカトリック・プロテスタントがともに認める三位一体説が分裂した祖国を統一する思想だと考え、これを弁証法と名づける。『精神現象学』はその図式で認識論を書く最初の試みだが、複雑な問題をトリアーデの入れ子構造に押し込んでいるので、必要以上に難解になってしまった。
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最後の30ページでヘーゲル以降の200年を要約し、マルクスとレーニンを一からげにして批判する一方、「グローバル化」や「新自由主義」を攻撃して終わる。著者は理解していないが、マルクスのコミュニズムこそヘーゲルの自由主義の論理的帰結であり、それを実現したのがグローバリゼーションなのだ。"
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弁証法と三位一体説がこんな関係だったのか。