我慢しろと言われたわけではないけれども
わがままを言ってはいけないのだと
周囲の状況から判断して
欲望を先取りして断念していた
そのうち欲望も曖昧になっていた
良い子でいたいと思ったわけではないのだが
それ以外の選択肢は考えられなかった
引っ込み思案だったし率直に希望を言うことも出来なかった
そのことで周囲の人たちは安心していただろう
私は安全パイだった
嫌だとも言えず
それがほしいとも言えず
そうしたいとも言えず
何も言わなければそれで簡単に収まるのだと判断しそれはそれで賢さの証明であった
静かな諦念は教養の証明であるような気もしていた
そのような人生が大きくなるわけもなく豊かになるわけもなかった
ただ静かに我慢の時間が流れているだけだった
もしあのときもっと自分の人生を守るために外側に大きく行動していたらどうだったかと
思わないこともないが
結局の収束点はあまり違わないような気がする
その人にふさわしい場所があるものなのだろう
生まれ変わったらもう少し別の生き方もいいような気がする