[イントラパーソナル(intrapersonal)とインターパーソナル(interpersonal)]
イントラパーソナル(intrapersonal)とは、「個人内の・精神内界の」という意味であり、心理学では「個人間の・対人関係の」という意味を持つインターパーソナル(interpersonal)の対義語に当たる。
シグムンド・フロイトが創始してアンナ・フロイトへと継承されていく正統派の精神分析では、イントラパーソナルな自我構造(超自我・自我・エス)内部の葛藤が神経症の病因として重視される一方で、無意識に抑圧されたインターパーソナルな実際に起きた対人関係も考慮されていた。
20世紀初頭の精神分析研究において「インターパーソナルな対人関係における心的過程」と「イントラパーソナルな個人内部における心的過程」の二元論的な研究法のアイデアは既に生まれていたが、現在の一般心理学では外部から観察できないイントラパーソナル(個人の内面的)な部分よりも、行動次元の心的過程が注目されることが多い。
しかし、その一方で、臨床心理学で統計学的根拠がある認知療法や認知行動療法が隆盛し、認知科学や脳科学の影響を受けた認知心理学の影響力が大きくなっているように、「イントラパーソナルな心的過程」を外部世界をどのように認識して解釈するかの認知過程(内的な情報処理過程)と見なす心理学研究が発展している状況がある。
イントラパーソナルな領域の心的過程や心理状態は、外部にいる他者が客観的な観察を行うことが出来ないので、声のある無しを問わず「独言・独白(monologue)」の形態で自己認識されることが多い。反対に、インタパーソナルな領域の心的過程や心理状態は、外部にいる他者との相互的なコミュニケーション(対話・会話)や作用(影響力)として認識される。私達の精神生活は、自分自身の内面と向き合って思考・感情・知覚を確認するイントラパーソナルな領域と、他者と向かい合って会話や議論を行ったりするインターパーソナルな領域から成り立っている。