摂食障害の致死的転帰
Fatal Outcomes of Eating Disorders
平均13年間の追跡調査が行われた研究のメタアナリシスにおいて、神経性無食欲症は5.86の標準化死亡比(SMR)で死亡リスクに関連していた。
摂食障害の治療は進歩したが、臨床では依然として治療に難渋する疾患である。Arcelusらは本研究において、神経性無食欲症(AN)、神経性大食症(BN)、あるいは特定不能の摂食障害(EDNOS;ANやBNの診断基準を完全には満たさない摂食障害)を有する合計12,808例の患者が対象となった縦断的研究36件(平均追跡期間13年)のメタアナリシスを実施し、死亡率を検討した。
摂食障害全体の死亡率は基準集団に比べて高かった(SMR:AN, 5.86;BN, 1.93;EDNOS, 1.92)。ただし,EDNOSのSMRは4件の研究データのみから算出されていた。ANに関するデータが得られた研究35件の解析では、入手可能な限られた情報に基づく結果であるが、初回受診時の高い年齢が唯一、死亡の予測因子であった。そして、AN死亡例の20%は自殺による死亡であった。
コメント
EDNOSと診断された患者には施設間でかなり違いがみられる。また、他の研究者の報告によると、EDNOSの診断名がついた患者の80%超は以前にANまたはBNと診断されていたか、その後の経過でいずれかの疾患を発症するという。したがって、今回の研究で特定不能の摂食障害患者にみられた死亡率の上昇は、実際にはANに起因する可能性が考えられる。さらに、摂食障害患者における高い死亡率をもたらす原因の多くは、併存する精神疾患(とくに気分障害)や内科疾患であるかもしれない。それでも、ANにおける死亡率が依然として高いことは憂慮すべき問題であり、ANの罹患期間は長く、中高年以降の発症率が以前考えられていたよりも高いことが最近指摘されている。摂食障害を有するすべての患者、とりわけAN患者では死亡リスクがかなり高いことを臨床医は認識しておく必要がある。