自閉症患者は本人の社会的名声に対して関心を示さないようだ Autistic People Seem Oblivious to Their Social Reputation 観察されることで健常対照者はより寛容な行動をとるが、高機能自閉症患者は同様な行動を示さないことが、ゲームを用いた実験で明らかになった。 自閉症スペクトラム障害(ASD)患者の社会的行動を詳細に検討することは、対象を絞った介入を開発していくうえで重要である。本研究は、成人ASD患者における社会的名声の役割を理解する目的で行われ、著者

自閉症患者は本人の社会的名声に対して関心を示さないようだ
Autistic People Seem Oblivious to Their Social Reputation
観察されることで健常対照者はより寛容な行動をとるが、高機能自閉症患者は同様な行動を示さないことが、ゲームを用いた実験で明らかになった。
自閉症スペクトラム障害(ASD)患者の社会的行動を詳細に検討することは、対象を絞った介入を開発していくうえで重要である。本研究は、成人ASD患者における社会的名声の役割を理解する目的で行われ、著者らは他者による観察が慈善行為に及ぼす影響をいくつかの実験を用いて評価した。
高機能ASD患者10例(平均年齢29歳、女性2例)および健常対照者11例(平均年齢30歳、女性1例)は、実験課題と対照課題(continuous performance test[CPT])を被験者のみ(観察者不在)の場合と観察者同席の場合で各1回ずつ(合計2回)行った。実験課題では、被験者にお金が割り当てられ、本人の負担費用を種々に変えた設定で慈善事業に寄付するかどうかを選択させた。共感、観察による情緒的影響、社会的承認への要求も測定された。
寄付した場合の負担費用が慈善団体の受け取る金額を上回る設定では、両群とも寄付する割合が低かった。しかし、健常対照群でのみ、観察者が同席していると被験者単独時(観察者不在時)に比べて寄付する割合が高かった。CPTで評価した両群の行動は同様であり、被験者単独時(観察者不在時)に比べ観察者同席時のほうが成績は良好であった。気分および社会的承認への要求に関しては両群間に差を認めなかったが、共感はASD群のほうが低かった。被験者の診断に対する観察者のバイアスについて、独立した評価者がビデオテープを符号化して検証したが、バイアスは検出されなかった。
コメント
著者らは、これらの結果を、ASD患者では「心の理論」が正常に機能していない、すなわち他者の考えが与える社会的影響を認識できないために社会的名声では動機づけられない、と解釈している。行動変容やその他の介入には、文脈(状況)の意味を把握せずに特定の社会慣習に従うよう訓練された“Manchurian Candidates”(訳注)を生み出さないことが求められるであろう。
訳注:米国作家リチャード・コンドンが執筆した小説『The Manchurian Candidate(影なき狙撃者)』に登場する主人公にたとえて、洗脳された人を意味する。
—Barbara Geller, MD
掲載:Journal Watch Psychiatry November 7, 2011