脳を使いなさい、さもないとだめになる Your Brain — Use It or Lose It 知的活動性の高い生活習慣はアルツハイマー病の神経病理学的変化を防ぐことはできないが、認知能力の使用は男女それぞれ異なる形で変化を最小限に抑えるのに役立つ。 動物およびヒトを対象にした複数の研究が、知的活動の刺激によって認知機能低下のリスクが抑制されることを示唆している。本論文の著者Valenzuelaらは、高齢者13,004例を14年間追跡した英国の前向きコホート研究(Cognitive Functio

脳を使いなさい、さもないとだめになる
Your Brain — Use It or Lose It
知的活動性の高い生活習慣はアルツハイマー病の神経病理学的変化を防ぐことはできないが、認知能力の使用は男女それぞれ異なる形で変化を最小限に抑えるのに役立つ。
動物およびヒトを対象にした複数の研究が、知的活動の刺激によって認知機能低下のリスクが抑制されることを示唆している。本論文の著者Valenzuelaらは、高齢者13,004例を14年間追跡した英国の前向きコホート研究(Cognitive Function and Ageing Study)のデータを用いて機序に関する検討を行った(追跡中の死亡例329例に対して脳の剖検が行われた)。今回の解析では、神経病理とCognitive Lifestyle Score(CLS)の関連が検討された。CLSは教育年数、職業の複雑性(occupational complexity)、社会参加度を測定する評価法である。
関連する臨床的危険因子(年齢、認知症の状態、APOE4アレル等)および血管系危険因子で補正後、CLS高値(すなわち、知的活動性の高い生活習慣)の男性ではCLS低値の男性に比べ、微小血管障害および関連白質病変の相対リスクが80%低く、ラクナ梗塞の相対リスクが70%低かった。CLS高値の女性ではCLS低値の女性に比べ、脳重量が大きかった(しかし、脳血管障害の頻度は低くなかった)。男性ではCLS高値に関連して死亡時に認知症を有するリスクが80%低下したが、女性では有意な関連は認められなかった。72例からなる部分集団において、CLS高値は海馬の神経細胞脱落に対する保護に寄与しなかった。しかしながら、他の危険因子について補正した場合、CLS高値は男女ともに神経細胞密度の上昇、Brodmannの9野における皮質リボンの肥厚と関連していた。
コメント
知的活動性が高い生活習慣と社会参加が脳および脳血管に直接影響するのか、神経学的にレジリエンスの高い人が知的活動性の高い生活習慣をとるのか、あるいはレジリエンスの増大につながる素因が知的活動の素因と関連しているのかはまだわかっていない。しかしながら、認知再訓練は認知機能の低下を改善することから(JW Psychiatry Oct 17 2011)、環境と脳のあいだの双方的作用が複数の機序を介して認知症に対して予防的に働く可能性が示唆される。
—Steven Dubovsky, MD
掲載:Journal Watch Psychiatry May 25, 2012