情報処理障害は統合失調症の発症に先行する
Information-Processing Deficit Precedes Onset of Schizophrenia
環境音の変化に対する前注意過程を反映する2つのマーカーに関して、健常対照者と初発統合失調症患者あるいは(統合失調症の)高リスク者には差がある。
(本論文が示す)最新のエビデンスは、統合失調症における中核的な障害は社会情報処理の異常であるとするBleulerらによる観察結果を支持するものである(JW Psychiatry Jan 18 2008)。オーストラリアの研究者Atkinsonらは誘発電位を用いて前注意過程での聴覚情報の変化検出、すなわちミスマッチ陰性電位(MMN:音刺激反復呈示中の変化に対する反応)とその後に生じる注意の切り替えを示唆する電位の陽性シフト(P3a)を測定した。研究には精神病の初回エピソードが寛解した若年成人患者(FEP)11例、精神病発症の超高リスク者(UHR)30例(軽度あるいは間欠的な精神病症状、精神病家族歴[第1度近親者]、機能低下を認める)、健常対照者20例が参加した。
研究者らは被験者に持続時間の異なる音刺激を交互に聴かせ、MMNとP3aを測定した結果、FEP群とUHR群ともに対照群に比べMMNが低かった。試験終了後に明らかな精神病に進展したUHR群の6例におけるMMNの75%は、精神病を発症しなかった他のUHR群被験者におけるMMN中央値と比較し有意に小さかった。UHR群では対照群と比べP3aが有意に小さかった。対照群においてのみMMNとP3aが相関していた。
コメント
MMNとP3aはおそらく前注意過程での聴覚情報処理における異なる成分を反映している指標である。これらの指標は、聴覚入力の変化を知覚する過程で聴覚皮質、上側頭回後部、前頭前野におけるシステムの統合を反映する。本論文について論評者らは、これらの反応の障害は精神病発症前に存在するようだと述べ、他人が話した言葉の調子や強弱の変化といった社会的に重要な情報を正しく認識する能力が低下している可能性を指摘している。脆弱性の高い人では、対人関係世界に対する認識能力の障害が陰性症状に関与したり、環境についての精神病的解釈を行う閾値を低下させたりすることが考えられる。情報処理障害を標的とした治療は、とくに統合失調症の初期段階、すなわち外界について精神病的な理解が固まる前に実施すれば効果があるかもしれない。