夜間の人工照明はうつ病の誘因となる
Artificial Light at Night Provokes Depression
今回の動物実験では、人工照明はうつ様の行動的・神経生物学的特徴を促進し、これらは腫瘍壊死因子(TNF)拮抗薬により改善する。
20世紀後半の数十年間におけるうつ病有病率の上昇は、近年の環境変化がなんらかの役割を果たしていることを示唆する。可能性がある要因の1つは夜間の人工照明への長期曝露である。Bedrosianらによる本研究では、ハムスターを夜間に暗環境もしくは低照度の人工照明環境に曝露した。
夜間人工照明曝露はうつ様行動、海馬における脳由来神経栄養因子(BDNF)遺伝子の発現低下、樹状突起棘密度の低下、そして腫瘍壊死因子(TNF)-α遺伝子の発現亢進と関連していた。照明曝露を中止すると、2週間以内にこれらの変化は改善した。行動の変化はTNF拮抗薬(メーカー提供)の脳内注入によっても改善した(なお、樹状突起棘密度の低下は変わらなかった)。
コメント
夜間の照明は、動物においてうつ様行動の発現を防ぐことが知られているホルモンであるメラトニン分泌を抑制する。一方、TNFのような炎症性サイトカインはうつ病を誘発する。患者によっては夜間の人工照明曝露がうつ病を悪化させたり、さらにはうつ病からの回復を妨げる可能性はあるのであろうか。早朝まで夜更かしし、それから昼過ぎまで寝ている患者(すなわち、早朝の日光への曝露が少ない患者)は、とくにこの影響に対して脆弱なのだろうか。テレビの前で居眠りしても同様な影響を受けるのであろうか。早い時間の就寝と夜間にできるだけ光に曝露しないように促すことは、うつ病の再発予防、そしておそらく回復促進をも目的とする介入として、一部の患者に提案できる簡便な方法となるであろう。
—Peter Roy-Byrne, MD
掲載:Journal Watch Psychiatry August 6, 2012