双極I型障害の遺伝的中間表現型 A Genetic Endophenotype for Bipolar I Disorder? 患者とその第1度近親者における動機付けに関連した神経系の活性化は対照者と異なる。 動機付け機能の障害は双極性障害における顕著な特徴の1つである。躁病には誘因動機付けへの過剰な感受性があり、ネガティブな結果が予想されてもポジティブな刺激(きっかけ)に対して強迫的に邁進するのに対し、うつ病の特徴は関心の喪失である。これまでの研究から、躁状態、うつ状態、気分正常の双極性障害患者は、

双極I型障害の遺伝的中間表現型
A Genetic Endophenotype for Bipolar I Disorder?
患者とその第1度近親者における動機付けに関連した神経系の活性化は対照者と異なる。
動機付け機能の障害は双極性障害における顕著な特徴の1つである。躁病には誘因動機付けへの過剰な感受性があり、ネガティブな結果が予想されてもポジティブな刺激(きっかけ)に対して強迫的に邁進するのに対し、うつ病の特徴は関心の喪失である。これまでの研究から、躁状態、うつ状態、気分正常の双極性障害患者は、(成果-報酬の)偶発性が変動した場合、これら以外の人に比べ、失敗を犯しやすいことが知られている。双極性障害患者ではこれらの障害と並行して眼窩前頭領域の異常な活性化が認められる。
本論文の著者Linkeらは、動機付け機能を調節している神経系は双極I型障害に関する中間表現型を有するのではないかと推測し、報酬を頻繁に変更した場合の選択変更能力ならびに同時に実施した機能的MRI画像を以下の2群において比較した:気分正常の双極性障害19例と背景因子が一致する対照者19例、患者の第1度近親者で双極性障害のない22例と背景因子が一致する対照者22例。コンピュータ・カードゲームにおいて、患者群および近親者群では対照群に比べ獲得した金額が少なかった。対照群と比較し、患者群と近親者群では報酬返還の偶発変化に反応した右扁桃体の活性化が大きく、さらに報酬および報酬返還の偶発性に対する前頭前野の活性化も増大していた。
コメント
「(ゲームに)勝っている」ときにみられる活性化の増強は報酬に対する感受性の亢進を反映しており、報酬返還時における活性化の増強は「失敗の予測」に関係するシグナル伝達の減弱を示している可能性がある、と著者らは示唆している。動機付け機能の調節異常を示す所見が患者および非罹患近親者の両群で認められたことは、双極性障害に関する神経系中間表現型の存在を支持する結果である。非罹患近親者の平均年齢は28歳であり、将来、双極性障害を発症する人もいると考えられる。このような神経系レベルにおいて双極性障害の「リスク値踏み機構」に関する中間表現型が特定されれば、家族の予後をより正確に予測できるようになり、有効な治療法のターゲットをさらに増やすかもしれない。
—Joel Yager, MD
掲載:Journal Watch Psychiatry February 17, 2012